長期前払費用の仕訳・会計処理

経過勘定のうち、前払費用については1年基準が適用され、決算日の翌日から起算し1年を超えて費用化される金額については『長期前払費用』として処理することが必要となります(企業会計原則注解・注16参照)。
『長期前払費用』は貸借対照表上は投資その他の資産として表示されます(財務諸表等規則第16条・第31条の2等参照)。

(具体例-長期前払費用)

1.×1年1月1日において、むこう3年間の火災保険料36,000円を現金で前払いした。なお、当社の決算日は3月31日である。

(仕訳・支払時)
借方 金額 貸方 金額
支払保険料 36,000 現金 36,000

2.×1年3月31日決算日を迎えた。火災保険料の繰り延べに関する仕訳を示しなさい。

(計算過程)
上記1の仕訳では支払額を全額『支払保険料』として計上していますので、翌期以降の期間に対応する金額について費用の繰り延べ処理を行います。なお前払費用は1年基準が適用されますので、決算日の翌日から起算して1年超の期間に対応する部分は『長期前払費用』として処理することになります。

支払日から3年後までの期間:×1年1月1日から×3年12月31日までの36か月
支払日から決算日までの期間:×1年1月1日から×1年3月31日までの3か月
×1年度決算日の翌日から1年間の期間:×1年4月1日から×2年3月31日までの12か月
×1年度決算日の翌日から1年超の期間:×2年4月1日から×3年12月31日までの21か月

∴翌期配分額:36,000円×12か月/36か月=12,000円
翌々期以降配分額:36,000円×21か月/36か月=21,000円

(仕訳・決算時)
借方 金額 貸方 金額
前払費用 12,000 支払保険料 33,000
長期前払費用 21,000

前払費用は貸借対照表上は流動資産の区分に、長期前払費用は投資その他の資産の区分に表示されます。

3.×1年4月1日期首の再振替仕訳を示しなさい。

(仕訳・翌期首時)
借方 金額 貸方 金額
支払保険料 33,000 前払費用 12,000
長期前払費用 21,000

4.×2年3月31日決算日を迎えた。火災保険料の繰り延べに関する仕訳を示しなさい。

(計算過程)

支払日から3年後までの期間:×1年1月1日から×3年12月31日までの36か月
×2年度決算日の翌日から1年間の期間:×2年4月1日から×3年3月31日までの12か月
×2年度決算日の翌日から1年超の期間:×3年4月1日から×3年12月31日までの9か月

∴翌期配分額:36,000円×12か月/36か月=12,000円
翌々期以降配分額:36,000円×9か月/36か月=9,000円

(仕訳・決算時)
借方 金額 貸方 金額
前払費用 12,000 支払保険料 21,000
長期前払費用 9,000

上記では計算過程表示のため期首に長期前払費用も含めて再振替していますが、長期前払費用の期首振替はおこなわず、決算時に翌年度に費用化する金額を長期前払費用から前払費用へと振り替える場合もあります。この場合上記3の期首仕訳および上記4の決算仕訳は以下のようになります。

(仕訳・3翌期首時-別解)
借方 金額 貸方 金額
支払保険料 12,000 前払費用 12,000
(仕訳・4決算時-別解)
借方 金額 貸方 金額
前払費用 12,000 長期前払費用 12,000

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