長期前払費用と長期前受収益(為替予約)の仕訳

外貨建金銭債権債務に対し為替予約を付し、振当処理を採用した場合、為替予約差額は以下の2つに分解することができます。

直直差額(取引発生時と為替予約時の直物為替相場の変動による差額)
直先差額(為替予約時の直物為替相場と先物為替相場との差額)

直直差額は予約日の属する期の損益(為替差損益)として処理し、直先差額については日数又は月数による期間を基準として各期へ配分することが求められていますが、直先差額のうち次期以降に配分された額は、貸借対照表上、長期前払費用又は長期前受収益として両建てで表示する(ただし1年基準の適用により、決算日から1年内に到来する期間に対応するものは、前払費用又は前受収益として表示します)ことが必要となります(重要性のないものについては区分掲記しないこともできます。外貨建取引等の会計処理に関する実務指針第10項参照)。

(具体例-振当処理・長期前受収益)

1.×1年1月1日において、設備投資に伴う長期資金調達のため発行した外貨建社債1,000ドル(社債発行日は×0年10月1日、償還日は×5年9月30日、発行時の直物レートは1ドル100円)について、為替相場変動リスクを回避するため1ドル94円で為替予約を行った。なお×1年1月1日の直物レートは99円である。当該為替予約について振当処理を適用した場合の仕訳を示しなさい。

(計算過程)

直直差額:(@100円-@99円)×1,000ドル=1,000円
直先差額:(@99円-@94円)×1,000ドル=5,000円

(仕訳・為替予約時)
借方 金額 貸方 金額
社債 6,000 為替差益 1,000
長期前受収益 5,000

2.×1年3月31日決算日を迎えた。上記為替予約に関する決算時の仕訳を示しなさい。なお決算日現在における直物レートは1ドル101円、先物レートは1ドル95円であった。

(計算過程)
直先差額の期間配分計算

予約時から決済時までの期間:×1年1月1日から×5年9月30日までの57か月
予約時から決算時までの期間:×1年1月1日から×1年3月31日までの3か月

∴当期配分額:5,000円×3か月/57か月=263円
翌年度配分額:5,000円×12か月/57か月=1,053円

(仕訳・決算時)
借方 金額 貸方 金額
長期前受収益 1,316 為替差損益 263
前受収益 1,053

×2年3月期に配分される金額を長期前受収益から前受収益勘定に振り替えています。振当処理を採用していますので決算時の為替レートは債権債務評価上は考慮していません。

3.×5年9月30日決済日を迎えた。外貨建社債の償還額を当座預金から支払った。決済日の仕訳を示しなさい。なお決済日現在における直物レートは1ドル90円であった。

(仕訳・決済時)
借方 金額 貸方 金額
社債 94,000 当座預金 94,000
前受収益 525 為替差損益 525

為替予約を付していますので予約レートで償還額を支払います。さらに最終年の前受収益配分額を為替差損益に振り替えます。

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