直直差額と直先差額(じきじき・じきさきさがく)
外貨建債権債務について取引発生後に為替予約を付し、為替予約の処理として振当処理を採用している場合、外貨建債権債務を予約時の先物為替相場による為替レート(予約レート)により換算することになります。
為替予約を付す前の段階において、外貨建債権債務は取引発生時(または決算時)の直物為替相場による為替レートにより換算されていますので、先物為替相場によるレートで換算した結果生じる換算差額(取引発生時の直物為替相場による為替レートと為替予約時の先物為替相場による為替レートとの差額)は以下の2つに分解することができます。
直直差額=取引発生時と為替予約時の直物為替相場の変動による差額
直先差額=為替予約時の直物為替相場と先物為替相場との差額 |
外貨建取引等会計処理基準においては、振当処理を採用する場合、直直差額については予約日の属する期の損益として処理し、直先差額については日数又は月数による期間を基準として各期へ配分することが求められています。
直先差額は理論的には2通貨間の金利差から生じるものであることから、金利調整差額として予約時から決済時までの期間に応じ各期に配分することを原則としますが、金額の重要性が乏しい場合には、期間配分することなく、為替予約等を締結した日の属する事業年度の損益として処理することも認められます。また当該為替予約が物品の売買又は役務の授受に係る外貨建金銭債権債務に対して、取引発生時以前に締結されたものである場合なども実務上の煩雑さを考慮し、期間按分することなく処理する方法が認められます(外貨建取引等会計処理基準注解・注7、外貨建取引等の会計処理に関する実務指針第8項・53項参照)。
(具体例-直直差額と直先差額の算定)
1.×0年12月31日において、外貨建借入金100ドル(借入日は×0年11月30日、返済日は×1年6月30日、借入時の直物レートは1ドル100円)について、1ドル110円で為替予約を行った。なお×0年12月31日の直物レートは102円である。当該為替予約について振当処理を適用した場合の仕訳を示しなさい。
(計算過程)
直直差額:(@100円-@102円)×100ドル=△200円
直先差額:(@102円-@110円)×100ドル=△800円
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
為替差損益 | 200 | 借入金 | 1,000 |
前払費用 | 800 | - | - |
2.×1年3月31日決算日を迎えた。上記為替予約に関する決算時の仕訳を示しなさい。
(計算過程)
直先差額の期間配分計算
予約時から決済時までの期間:1月1日から6月30日までの6か月
予約時から決算時までの期間:1月1日から3月31日までの3か月
∴当期配分額:800円×3か月/6か月=400円
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
為替差損益 | 400 | 前払費用 | 400 |
直先差額が借方残高の場合は『前払費用』、貸方残高の場合は『前受収益』勘定を使用します。決算時において外貨建債権債務の決済日までの期間が1年を超える期に対応するものは1年基準を適用し『長期前払費用』または『長期前受収益』勘定で処理します。
なお、損益として配分された直先差額は為替差損益として処理することになりますが、合理的な方法により配分された直先差額は、金融商品会計実務指針における債券に係る償却原価法に準じて、利息法又は定額法により利息の調整項目(受取利息や支払利息など)として処理することもできます(外貨建取引等の会計処理に関する実務指針第9項参照)。
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