営業取引発生後に為替予約を付した場合(振当処理)

為替予約の会計処理には独立処理と振当処理の2つの方法があります。
このうち振当処理とは、為替予約等により固定されたキャッシュ・フローの円貨額により外貨建金銭債権債務を換算し、直物為替相場による換算額との差額を、為替予約等の契約締結日から外貨建金銭債権債務の決済日までの期間にわたり配分する方法をいいます(外貨建取引等の会計処理に関する実務指針第3項参照)。

振当処理による会計処理方法は、外貨建債権債務が商品売買などの営業取引により発生したものか、それとも資金の貸し借りなど資金取引により発生したものか、および為替予約を付した時期により以下のように分類することができます。

(為替予約・振当処理)
1.営業取引・取引発生時に為替予約を付した場合

売上や仕入などの外貨建取引および売掛金や買掛金などの外貨建債権債務を取引発生時において先物相場による為替レート(予約レート)により換算し、取引発生後の為替相場の変動による損益は考慮しないように処理します。
営業取引発生時までに為替予約を付した場合
2.営業取引・取引発生後に為替予約を付した場合

売掛金や買掛金など、営業取引により発生した外貨建債権債務を取引発生後に為替予約を付した場合、換算差額を直直差額と直先差額と分解し、前者は予約時の損益(為替差損益)として処理し、後者は予約時から決済時までの期間に配分し、各期の損益とします。
当ページ下記参照

物品売買や役務提供など営業取引により発生した外貨建債権債務について、取引発生後に為替予約を付した場合、外貨建債権債務については予約時において、予約時の先物為替相場(予約レート)により将来のキャッシュフローが確定しますので、予約時の先物レートにより売掛金や買掛金などの外貨建金銭債権債務を換算します。
いっぽう、予約レートで換算する前はこれらの債権債務は取引発生時(または決算時)の直物為替相場による換算額で記帳されていますので、予約レートで換算することにより取引発生時の直物為替相場と為替予約時の先物為替相場の差額分だけ換算差額(為替予約差額)が発生します。この換算差額は以下の2つに分類することができます。

直直差額:取引発生時と為替予約時の直物為替相場の変動による差額
直先差額:為替予約時の直物為替相場と先物為替相場との差額

上記の差額のうち、直直差額については予約日の属する期の損益(為替差損益)として処理し、直先差額については日数又は月数による期間を基準として各期へ配分し各期の損益として処理することになるます(外貨建取引等会計処理基準注解・注7、外貨建取引等の会計処理に関する実務指針第8項・53項参照)。

(具体例-為替予約・営業取引発生後に付した場合)

1.×1年1月31日において、当社は海外の取引先から商品を300ドルで購入し、代金は3か月後の×1年4月30日に支払うこととした。取引発生時の直物為替相場は1ドル100円であった。

(計算過程)
外貨建取引:100円×300ドル=30,000円
外貨建債務(買掛金):100円×300ドル=30,000円

(仕訳・取引発生時)
借方 金額 貸方 金額
仕入 30,000 買掛金 30,000

2.×1年2月28日において、当社では為替相場変動リスクを回避するため、上記買掛金について先物為替相場1ドル105円(予約レート)で為替予約を行った。為替予約に関する仕訳を示しなさい。なお。×1年2月28日における直物為替相場は1ドル102円であった。

(計算過程)
直直差額:(@100円-@102円)×300ドル=△600円
直先差額:(@102円-@105円)×300ドル=△900円

(仕訳・為替予約時)
借方 金額 貸方 金額
為替差損益 600 買掛金 1,500
前払費用 900

3.×1年3月31日決算日を迎えた。上記の外貨建買掛金及び為替予約に関する仕訳を示しなさい。なお。決算日における直物為替相場は1ドル103円であった。

(計算過程)
直先差額の期間配分計算

予約時から決済時までの期間:3月1日から4月30日までの2か月
予約時から決算時までの期間:3月1日から3月31日までの1か月

∴当期配分額:900円×1か月/2か月=450円

(仕訳・決算時)
借方 金額 貸方 金額
為替差損益 450 前払費用 450

※ 外貨建買掛金は予約レートで将来のキャッシュフローが確定しているため期末に換算替えを行う必要はありません。

4.×1年4月30日、上記買掛金の決済日を迎えた。買掛金の代金は全額を当座預金から支払った。なお、当日の直物為替相場は1ドル107円であった。

(仕訳・決済時)
借方 金額 貸方 金額
買掛金 31,500 当座預金 31,500
為替差損益 450 前払費用 450

直先差額が借方残高の場合は『前払費用』、貸方残高の場合は『前受収益』勘定を使用し、日数又は月数による期間を基準として各期へ配分します。ただし、直先差額について金額の重要性が乏しい場合には、期間配分することなく、為替予約等を締結した日の属する事業年度の損益として処理することも認められます(外貨建取引等の会計処理に関する実務指針第8項参照)。

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