独立処理(為替予約)の仕訳・会計処理
為替予約の会計処理には独立処理と振当処理の2つの方法があります。
このうち独立処理とは、デリバティブ取引である為替予約取引と外貨建金銭債権債務とを別個の取引として、それぞれ金融商品会計基準および外貨建取引等会計処理基準に従って処理する方法であり、為替予約の会計処理においてはこの独立処理が原則的処理方法とされています。(金融商品会計に関する実務指針第167・168項、外貨建取引等会計処理基準注解・注6、外貨建取引等の会計処理に関する実務指針第3・50項等参照)。
独立処理を採用する場合、ヘッジ手段である為替予約取引とヘッジ対象である外貨建金銭債権債務について、それぞれ通常の会計処理を適用することにより、ヘッジ取引の効果が自動的に当期の損益に反映されるため、ヘッジ会計の要件等についての判定は必要ありません。しかし、ヘッジ対象が外貨建その他有価証券であり、為替換算差損益を純資産の部に直接計上しているときは、そのままではヘッジ手段とヘッジ対象から生ずる損益又は評価差額の純損益への計上時期が一致しないため、この場合についてはヘッジ会計が必要となります(金融商品会計に関する実務指針第167・168項参照)。
(具体例-為替予約・独立処理)
1.×1年3月1日において、当社は海外の取引先から商品を100ドルで購入し、代金は2か月後に支払うことにした(外貨建て買掛金)。取引発生時の直物為替相場は1ドル100円であった。当社では為替相場変動リスクを回避するため、当該買掛金について取引発生時に先物為替相場1ドル105円(予約レート)で為替予約を行った。取引発生時の仕訳を示しなさい。なお、当社では為替予約の会計処理については原則法である独立処理を採用している。
(計算過程)
外貨建取引(仕入・買掛金):@100円×100ドル=10,000円
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
仕入 | 10,000 | 買掛金 | 10,000 |
独立処理では外貨建取引と為替予約取引を別々に処理するため、外貨建取引は直物レートを使用して換算します。
なお為替予約を付した時点においては、デリバティブ取引により生じる正味債権・債務が等価となるため、為替予約に関する仕訳は行いません。
2.×1年3月31日決算日を迎えた。上記の外貨建て買掛金及び為替予約に関する仕訳を示しなさい。なお。決算日における直物為替相場は1ドル101円、先物相場による為替レートは107円であった。
(計算過程)
外貨建債務:(@100円-@101円)×100ドル=△100円
為替予約:(@107円-@105円)×100ドル=200円
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
為替差損益 | 100 | 買掛金 | 100 |
為替予約 | 200 | 為替差損益 | 200 |
上段が外貨建金銭債権債務の時価評価仕訳、下段がデリバティブの時価評価仕訳です。『為替予約』勘定は『為替予約未収金』『為替予約未払金』勘定を使用することもあります。
3.×1年4月30日、上記買掛金の決済日を迎えた。買掛金の支払額は全額を当座預金として処理した。なお、当日の直物為替相場は1ドル110円であった。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
買掛金 | 10,100 | 当座預金 | 10,500 |
為替差損益 | 600 | 為替予約 | 200 |
上記の仕訳は、下記の外貨建金銭債権債務(仕訳1)および為替予約(仕訳2)の2つの仕訳を合算したものです。
(計算過程1-外貨建金銭債権債務)
外貨建債権に係る為替差損益:(@101円-@110円)×100ドル=△900円
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
買掛金 | 10,100 | 当座預金 | 11,000 |
為替差損 | 900 | - | - |
(計算過程2-為替予約)
為替予約に関する損益:(@110円-@107円)×100ドル=300円
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
当座預金 | 500 | 為替予約 | 200 |
- | - | 為替差損益 | 300 |
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