新株発行と自己株式処分を同時に行った時の会計処理

新株発行に際し、保有する自己株式の処分(譲渡)を同時に行うことがあります。新株発行と自己株式の処分とを同時に行った時は、株主からの払込額を発行する新株数と自己株式数の割合に応じて按分し、それぞれ新株発行と自己株式の処分との処理を同時に行うことになります。

(払込額の按分計算)
新株発行分=払込額×新株発行数/(新株発行数+自己株式処分数)

自己株式分=払込額×自己株式処分数/(新株発行数+自己株式処分数)

なお、自己株式処分差損が発生する場合には増加する資本金等から自己株式処分差損を控除(相殺)します(会社計算規則第14条参照)。

(具体例1-新株発行と自己株式の処分)

募集株式の発行手続きにより、新株を90株発行し、保有する自己株式10株(帳簿価額8,000円)を処分した。新株発行に対する払込額は全額を資本金とする。払込額100,000円は当座預金とした。

(計算過程)

新株発行に対応する払込額:100,000円×90株/(90株+10株)=90,000円
自己株式処分に対応する払込額:100,000円×10株/(90株+10株)=10,000円
自己株式処分差額:10,000円-8,000円=2,000円(自己株式処分差益)

(仕訳)
借方 金額 貸方 金額
当座預金 100,000 資本金 90,000
自己株式 8,000
自己株式処分差益 2,000

株主となるものからの払込額を株式数の割合に応じて、新株発行分と自己株式処分の分とに按分します。自己株式処分差額は、自己株式処分に対応する払込額と自己株式の帳簿価額との差額として算定します。

(具体例2-新株発行と自己株式の処分・自己株式処分差損は生じる場合)

募集株式の発行手続きにより、新株を90株発行し、保有する自己株式10株(帳簿価額12,000円)を処分した。新株発行に対する払込額は全額を資本金とする。払込額100,000円は当座預金とした。

(計算過程)

新株発行に対応する払込額:100,000円×90株/(90株+10株)=90,000円
自己株式処分に対応する払込額:100,000円×10株/(90株+10株)=10,000円
自己株式処分差額:10,000円-12,000円=-2,000円(自己株式処分差損)
増加資本金等:90,000円-2,000円=88,000円

(仕訳)
借方 金額 貸方 金額
当座預金 100,000 資本金 88,000
自己株式 12,000

自己株式処分に対応する払込額が自己株式の帳簿価額を下回っており、自己株式処分差損が発生しています。募集株式の発行に際し発生する自己株式処分差損は増加する資本金等から控除(相殺)します。

(関連項目)
増資時(新株発行時)の仕訳
自己株式を処分した時の仕訳・会計処理

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