医療費控除の計算と対象

1.医療費控除の計算

納税者本人や生計を一にする配偶者・親族の医療費を支払った場合、所得税の計算上において、一定の金額を所得から差し引くことを医療費控除といいます。
医療費控除の金額は以下の算式で求めます(所得税法第73条参照)。

(医療費控除)

支払った医療費(保険・損害賠償などで補填される金額を除く)-以下のうちいずれか低い金額

(1)10万円
(2)総所得金額等の100分の5

医療費控除の最大額は200万円です。また医療費とは、対象となる年度に支出した医療費を指しますので未払の医療費は含みません(所得税法基本通達73-2参照)。
医療費控除を受けるためには確定申告が必要です(年末調整では医療費控除を受けることはできません)。

なお総所得金額等とは、サラリーマンであれば給与収入から給与所得控除額を差し引いた金額、事業主なら事業所得(利益部分)の金額の合計額をいいます(より正確には、純損失、雑損失、その他各種損失の繰越控除後の総所得金額、特別控除前の分離課税の長(短)期譲渡所得の金額、株式等に係る譲渡所得等の金額、上場株式等に係る配当所得の金額、先物取引に係る雑所得等の金額、山林所得金額及び退職所得金額の合計額をいいます)。

(ケース1-給与所得200万円以上の場合)

病院の治療費30万円、給与所得500万円の場合の医療費控除は以下の通りです。

(計算過程)
医療費控除額:30万円-10万円※=20万円

※ 総所得金額等の5%:500万円×5%=25万円
医療費から差し引く額:25万円>10万円 よって10万円

総所得金額等が200万円を超える場合(給与収入だけの場合は給与収入が311万6千円以上の場合)、総所得金額等×5%の金額が10万円を超えるため、医療費から差し引く金額が10万円となります。

(ケース2-給与所得200万円未満の場合)

病院の治療費30万円、給与所得120万円の場合の医療費控除は以下の通りです。

(計算過程)
医療費控除額:30万円-6万円※=24万円

※ 総所得金額等の5%:120万円×5%=6万円
医療費から差し引く額:6万円<10万円 よって6万円

(ケース3-保険・損害賠償などで補填される金額がある場合)

病院の治療費30万円(うち10万円は保険・損害賠償で補填された)、給与所得500万円の場合の医療費控除は以下の通りです。

(計算過程)
医療費控除額:30万円-10万円※-10万円※※=10万円

※支出した医療費のうち、10万円は保険等で補填されていますのでこの分を差し引きます。

※※ 総所得金額等の5%:500万円×5%=25万円
医療費から差し引く額:25万円>10万円 よって10万円

医療費は30万円ですが、そのうち10万円は保険等で補填され、納税者の実質的な負担になっていませんのでこの部分を差し引いて医療費控除を算定します。

(ケース4-多額の医療費が発生した場合)

病院の治療費300万円、給与所得500万円の場合の医療費控除は以下の通りです。

(計算過程)
医療費控除額:300万円-10万円※=290万円→200万(限度額)

※ 総所得金額等の5%:500万円×5%=25万円
医療費から差し引く額:25万円>10万円 よって10万円

医療費控除の最大額は200万円です。上記のケースでは医療費控除の限度額を超えていますので、実際に受けられる医療費控除は最大値の200万円までとなります。

2.医療費控除の対象となるもの、ならないもの

支出した医療費のうち、医療費控除の対象となるのは、医師又は歯科医師による診療又は治療、治療又は療養に必要な医薬品の購入その他医療又はこれに関連する人的役務の提供の対価のうち通常必要であると認められるものとして政令で定めるものとなります(所得税法第73条第2項参照)。
具体的には以下のような支出の場合、医療費控除の対象とすることができます(所得税法基本通達73-3から7等参照)。

1.医師又は歯科医師による診療又は治療の対価
2.治療又は療養に必要な医薬品の購入の対価
3.病院、診療所、介護老人保健施設、介護療養型医療施設等へ収容されるための人的役務の提供の対価
4.あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師による施術の対価
5.保健師、看護師、准看護師又は特に依頼した人による療養上の世話の対価
6.助産師による分べんの介助の対価
7.介護福祉士等による一定の喀痰吸引及び経管栄養の対価
8.介護保険制度の下で提供された一定の施設・居宅サービスの自己負担額
9.医師等による診療等を受けるための通院費、医師等の送迎費、入院の際の部屋代や食事代の費用、医療用器具等の購入代・賃借料
10.医師等による診療や治療を受けるために直接必要な、義手、義足、松葉杖、義歯などの購入費用

など

ただし、上記に当てはまる場合であっても、その病状などに応じて一般的に支出される水準を著しく超えない部分の金額に限られます。
またレーシック(視力回復レーザー手術)やオルソケラトロジー治療(角膜矯正療法)の費用なども医療費控除の対象とすることができます。

一方、以下のような支出は原則として医療費控除の対象とはなりません。

1.人間ドックその他の健康診断のための費用(ただし診断の結果、重大な重大な疾病が発見され、かつ、当該診断に引き続きその疾病の治療をした場合には、当該健康診断のための費用も医療費に該当することになります)
2.美容整形のための支出
3.医師等に対する謝礼
4.ビタミン剤などの病気の予防や健康増進のために用いられる医薬品の購入代金
5.親族に対する療養上の世話の対価
6.自家用車で通院する場合のガソリン代や駐車場の料金等
7.入院に際し寝巻きや洗面具などの身の回り品を購入した時の費用
8.差額ベッド代
9.メガネの購入費用(ただし斜視・白内障・緑内障などで手術後の機能回復のため短期間装用するものや、幼児の未発達視力を向上させるために装着を要するための眼鏡などで、治療のために必要な眼鏡として医師の指示で装用するものは、医療費控除の対象となります)

など

(関連項目)
あたらしい医療費控除(セルフメディケーション税制)とは
所得控除の一覧
妊娠・出産に関連する医療費控除の対象

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