給与所得控除と特定支出控除の控除額

1.給与所得控除

所得税の計算において、給与所得の金額は給与収入から給与所得控除を差し引いて求めることになります。
給与所得控除とは、サラリーマンなどの概算経費(みなし経費)をいい、以下の算式によって求められます(所得税法第28条参照)。

(給与所得控除-令和2年分以降)
給与収入 控除額
180万円以下 収入金額×40%-10万円(55万円に満たない場合には55万円)
180万円超 360万円以下 収入金額×30%+8万円
360万円超 660万円以下 収入金額×20%+44万円
660万円超 850万円以下 収入金額×10%+110万円
850万円超 195万円

なお、給与所得控除の金額は令和2年分より、一律に10万円引き下げられると同時に、給与収入850万円超の場合には給与所得控除は195万円までと上限が引き下げられています。

給与所得控除の10万円の引き下げは、働き方の多様化に対応するためのものであり、すべての納税者を対応とした基礎控除を10万円引き上げたことの代替としての処置となります。

平成29年分から令和元年分までの給与所得控除の金額は以下のなります。

(給与所得控除-令和元年以前)
給与収入 控除額
180万円以下 収入金額×40%(65万円に満たない場合には65万円)
180万円超 360万円以下 収入金額×30%+18万円
360万円超 660万円以下 収入金額×20%+54万円
660万円超 1,000万円以下 収入金額×10%+120万円
1,000万円超 220万円

なお、給与等の収入金額が660万円未満の場合には、上記の表にかかわらず、所得税法別表第五(簡易給与所得表)により給与所得の金額を求める為、上記表による計算と異なる場合があります。

2.特定支出控除

上記の給与所得控除はサラリーマンなどの給与所得者の概算経費(みなし経費)にあたるものですが、給与所得者については、給与所得控除とは別に、実際に支出した経費として、特定支出控除というものが認められます。
給与所得者が次の1から7にあてはまる支出(特定支出)をした場合、その特定支出の合計額が、下記の表の基準となる金額を超えるときは、確定申告によりその超える部分の金額を給与所得控除後の所得金額から差し引くことができます(所得税法第57条の2参照)。

(特定支出控除)
その年中の給与所得控除額×1/2

たとえば、給与収入1,000万円(給与所得控除は195万円)の場合において、200万円の下記1から6に当てはまる支出をした場合、特定支出控除は以下の通りになります。

2,000,000円-1,950,000円×1/2=1,025,000円

特定支出は、給与所得者の次に掲げる支出となります。

1.一般の通勤者として通常必要であると認められる通勤のための支出(通勤費)
2.勤務する場所を離れて職務を遂行するための直接必要な旅行のために通常必要な支出(職務上の旅費)
3.転勤に伴う転居のために通常必要であると認められる支出(転居費)
4.職務に直接必要な技術や知識を得ることを目的として研修を受けるための支出(研修費)
5.職務に直接必要な資格を取得するための支出(弁護士・会計士・税理士などの資格取得費を含む)
6.単身赴任などの場合で、その者の勤務地又は居所と自宅の間の旅行のために通常必要な支出(帰宅旅費)
7.次に掲げる支出(その支出の額の合計額が65万円を超える場合には、65万円までの支出に限ります。)で、その支出がその者の職務の遂行に直接必要なものとして給与等の支払者より証明がされたもの (勤務必要経費)

(1)書籍、定期刊行物その他の図書で職務に関連するものを購入するための費用(図書費)
(2)制服、事務服、作業服その他の勤務場所において着用することが必要とされる衣服を購入するための費用(衣服費)
(3)交際費、接待費その他の費用で、給与等の支払者の得意先、仕入先その他職務上関係のある者に対する接待、供応、贈答その他これらに類する行為のための支出(交際費等)

なお、これらの特定支出は、いずれも給与の支払者が証明したものに限られます。また、給与の支払者から補填される部分があり、かつ、その補填される部分に所得税が課税されていないときは、その補填される部分は特定支出から除かれます。この特定支出控除を受けるためには、確定申告を行う必要があります。

(関連項目)
サラリーマン・OLの確定申告について

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