法定福利費の仕訳・会計処理
会社が従業員の健康保険や厚生年金保険料、雇用保険料・労災保険料など(いわゆる社会保険)を負担した時は『法定福利費』勘定を使って記帳します。
これらの社会保険料については法律に基づき、事業主と従業員とがそれぞれの負担割合に応じて負担することになりますが、事業主負担分については『法定福利費』勘定を使って記帳し、従業員負担分(給与から天引きし、後日に会社負担分と一緒に年金事務所などに納付)については『預り金』勘定を使って記帳することになります。
(具体例1-法定福利費)
1.社員に今月分の給与300,000円を支払った。健康保険や厚生年金などの社会保険・労働保険の社員負担分30,000円を天引きし、残額について、会社の普通預金口座から社員指定の口座へ振り込んだ。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
給与 | 300,000 | 普通預金 | 270,000 |
- | - | 預り金 | 30,000 |
2.月末において、社員の給与から天引きした社会保険料30,000円を会社負担分30,000円と一緒に年金事務所へ普通預金口座から納付した。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
法定福利費 | 30,000 | 普通預金 | 60,000 |
預り金 | 30,000 | - | - |
社員に支払う給与から社会保険料の社員負担分を天引きした時は『預り金』勘定を使い、実際に年金事務所などに支払うとき、会社負担分は『法定福利費』として記帳します。
なお、社員負担分について『預り金』勘定を使うのではなく、『法定福利費』勘定の貸方に記入し、実際に年金事務所に支払った時に社員負担分と会社負担分をまとめて『法定福利費』勘定の借方に記入することもできます。
(具体例2-法定福利費・預り金勘定を別途使用しない方法)
1.社員に今月分の給与300,000円を支払った。健康保険や厚生年金などの社会保険・労働保険の社員負担分30,000円を天引きし、残額について、会社の普通預金口座から社員指定の口座へ振り込んだ(当社では社員負担分の社会保険料について、いったん『法定福利費』勘定の貸方に記入している)。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
給与 | 300,000 | 普通預金 | 270,000 |
- | - | 法定福利費 | 30,000 |
2.月末において、社員の給与から天引きした社会保険料30,000円を会社負担分30,000円と一緒に年金事務所へ普通預金口座から納付した。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
法定福利費 | 60,000 | 普通預金 | 60,000 |
なお、個人事業主の国民健康保険・国民年金などは、申告上は社会保険料控除として扱われるため、『法定福利費』として費用処理しませんのでご注意ください。
社会保険・労働保険の種類
法定福利費として処理される社会保険や労働保険には、おもに以下のようなものがあります。
名称 | 内容 |
健康保険 | いわゆる医療保険であり、被保険者である従業員やその家族の病気やけがに対し、その医療費の7割が給付されます。運営主体として協会けんぽ(主に中小企業)と組合健保(大企業中心)とがあり、協会けんぽについて保険料の納付は年金事務所で行います。 |
厚生年金保険 | 従業員の老後の生活を支える公的年金です。日本年金機構を運営主体とし、保険料は年金事務所に納付します。 |
雇用保険 | 従業員が失業した時や、育児休業中の場合などに給付される保険です。国が主管する保険であり、保険料は6月1日から7月10日までの間に申告納付します。 |
労災保険 | 労働者が業務上・通勤上に負傷した場合などに支給される保険です。パート・アルバイトなどを問わず、原則としてすべての使用人が対象となり、保険料は全額使用者(会社)が負担します。 |
(関連項目)
給料の仕訳・勘定科目
スポンサードリンク