貸倒引当金と貸倒額との差額(修正再表示と会計上の見積りの変更)
前期以前に発生した債権が回収不能(貸倒れたとき)は、前期末に設定した貸倒引当金を取り崩して補填することになりますが、貸倒引当金設定額と実際の貸倒額と差額については、その差額の性格により以下のような異なる処理が必要となります。
差額の発生原因 | 処理方法 |
計上時において見積もりに誤りがあった場合 | 前期以前の財務諸表にさかのぼって修正します(修正再表示)。仕訳処理としては、前期までの損益の累積である『繰越利益剰余金』という純資産勘定を使って記帳します。 |
当期の状況の変化に起因する場合 | 当期の状況の変化に起因するものであるため、当期の損益とします(会計上の見積りの変更)。仕訳処理としては、貸倒引当金の設定不足額は『貸倒損失』という費用勘定、設定超過額は『貸倒引当金戻入』という収益勘定を使って記帳します。 |
なお、貸倒損失の損益計算書における表示は、売掛金・受取手形などの営業債権に対するものは販売費及び一般管理費、貸付金などの営業債権以外の債権に対するものは営業外費用として表示します。また貸倒引当金戻入は営業外収益として表示します。(会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準(過年度遡及会計基準)第55項、金融商品会計に関する実務指針第123項、第125項参照)。
(具体例1-貸倒引当金・修正再表示)
前期以前に発生した売掛金100,000円が当期に貸倒れた。なお、前期期末において設定した貸倒引当金は70,000円であり、貸倒引当金設定額と実際の貸倒額との差額が発生した原因は、前期において貸倒引当金を設定する際の見積もりに誤りがあったためと判断した。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
貸倒引当金 | 70,000 | 売掛金 | 100,000 |
繰越利益剰余金 | 30,000 | - | - |
(具体例2-貸倒引当金・会計上の見積もりの変更)
前期以前に発生した売掛金100,000円が当期に貸倒れた。なお、前期期末において設定した貸倒引当金は70,000円であり、貸倒引当金設定額と実際の貸倒額との差額が発生した原因は、取引先が当期に災害にあったため(当期の状況の変化に起因もの)であった。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
貸倒引当金 | 70,000 | 売掛金 | 100,000 |
貸倒損失 | 30,000 | - | - |
上記の会計上の見積もりの変更に関する仕訳に関し、貸倒引当金設定額の方が実際の貸倒額より多かった場合は『貸倒引当金戻入』勘定を使って記帳します。
(関連項目)
当期に発生した債権が貸倒れたときの仕訳
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