連結会社間の手形取引の相殺(割引手形)

連結会社間で受取手形・支払手形などの手形取引があり、手形を受け取った側が当該手形を銀行など外部へ割り引いた場合(割引手形)、親会社と子会社を一つの企業集団としてみた場合は企業集団が銀行からお金を借りているのと同じとみることができますので、個別会計上の処理を取り消し、新たに借入金を認識するための連結修正仕訳が必要となります。

1.個別会計上の債権・債務を相殺する
2.企業集団としての借入金を計上する

以下、具体的な仕訳を見ていきましょう。

仕訳例

親会社P社が100%子会社のA社に対する買掛金100,000円を決済するために約束手形を振り出し、子会社A社がこれを銀行で割り引いた事例をもとに仕訳を考えていきます。

まずそれぞれの個別会計上の仕訳を考えていきます。
親会社P社は買掛金の決済のため手形を振り出しているため以下の通りとなります。

(親会社P社の個別会計上の仕訳)
借方 金額 貸方 金額
買掛金 100,000 支払手形 100,000

いっぽうで子会社S社は売掛金を手形で回収し、これを銀行で割り引いておりますので、S社の個別会計上の仕訳は以下の通りとなります。

(子会社Sの個別会計上の仕訳-売掛金の回収)
借方 金額 貸方 金額
受取手形 100,000 売掛金 100,000
(子会社S社の個別会計上の仕訳-手形の割引)
借方 金額 貸方 金額
当座預金など 100,000 受取手形 100,000

親会社P社と子会社S社とを一つの企業グループとした場合、連結会社間で発行した手形を銀行など外部に割り引く取引は単に企業集団が銀行からお金を借りているのと同じとみることができますので企業集団としてあるべき仕訳は以下のようになります。

(連結上あるべき仕訳)
借方 金額 貸方 金額
当座預金など 100,000 短期借入金 100,000

個別会計上の仕訳を連結上あるべき仕訳に修正する(連結修正仕訳)は、まず親会社・子会社間の手形取引の相殺、ならびに手形の割引を借入金へ振り替えの2通りの仕訳が必要となります。

(手形取引の相殺-赤字の債権債務の相殺
借方 金額 貸方 金額
支払手形 100,000 受取手形 100,000
(短期借入金への振り替え-青字の勘定科目間の振り替え
借方 金額 貸方 金額
受取手形 100,000 短期借入金 100,000

なお手形を割り引いた際に割引料が差し引かれる場合があります。以下、割引料ある場合の仕訳を例題をもとに詳しく見ていきましょう。

(例題-手形の割引にかかる連結修正仕訳)

親会社P社が100%子会社のA社に対する買掛金100,000円を決済するために約束手形を振り出し、×5年10月1日に子会社A社がこれを銀行で割り引いた。なお手形の割引に際して割引料として3,000円が差し引かれ残額がA社の当座預金口座に振り込まれた。P社の決算日は×5年12月31日、手形の決済日が×6年3月31日であるものとした場合において手形の割引について必要な連結修正仕訳を示しなさい(税効果会計は考慮しないものとする)。

(解答・解説)
まずは親会社P社と子会社S社の個別会計上の仕訳を見ていきましょう。上記の具体例との違いは今回は手形割引時に割引料が発生しております。

(親会社P社の個別会計上の仕訳)
借方 金額 貸方 金額
買掛金 100,000 支払手形 100,000
(子会社Sの個別会計上の仕訳-売掛金の回収)
借方 金額 貸方 金額
受取手形 100,000 売掛金 100,000
(子会社S社の個別会計上の仕訳-手形の割引)
借方 金額 貸方 金額
当座預金 97,000 受取手形 100,000
手形売却損 3,000

上記の通り連結会社間で振り出した手形の割引は、各連結会社を一つの企業集団とみる連結会計上の観点からは銀行など外部からの金銭の借り入れ(短期借入金など)として処理することになります。
また割引手形の短期借入金への振り替えにともない、手形の割引料が発生している場合にはこれを金銭の借り入れに伴う『支払利息』として処理することになります。
支払利息は資金の借入時から満期日にかけて継続的に発生するものですので、個別会計上の『手形売却損』として計上した金額を手形の割引日から決済日までの期間で配分し、連結決算日以降の期間に対応する部分は『前払費用』(または『前払利息』)として処理することとなります。

本例題においては手形の割引日は×5年10月1日、決済日が×6年3月31日で割引日から決済日までの期間が6か月、また連結決算日は割引日から3か月目にあたる×5年12月31日のため、割引料のうち翌期以降の期間に対応する部分の金額は以下のように計算します。

割引料合計3,000円×3月/6月=1,500円(前払費用へ振り替え)

したがって、連結修正仕訳(債権債務の相殺、短期借入金への振り替え)は以下のようになります

(連結修正仕訳-債権債務の相殺)
借方 金額 貸方 金額
支払手形 100,000 受取手形 100,000
(連結修正仕訳-短期借入金への振り替え)
借方 金額 貸方 金額
受取手形 100,000 短期借入金 100,000
(連結修正仕訳-手形売却損の支払利息への振り替え)
借方 金額 貸方 金額
支払利息 3,000 手形売却損 3,000
(連結修正仕訳-支払利息のうち翌期に対応する部分の前払費用への振り替え)
借方 金額 貸方 金額
前払費用 1,500 支払利息 1,500

上記の仕訳は以下のようにまとめて行ってもかまいません。

(連結修正仕訳-まとめ)
借方 金額 貸方 金額
支払手形 100,000 短期借入金 100,000
支払利息 1,500 手形売却損 3,000
前払費用 1,500

(関連項目)
連結会社間の手形取引の相殺消去の基礎
親会社の設定した貸倒引当金の処理の基礎(連結会計)
連結会社間の手形取引の相殺(裏書手形)

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