貸付金・借入金との相殺消去の基礎(連結会計)
連結財務諸表とは、親会社や子会社などの関係会社を一つの企業グループとし、企業グループ全体の財政状態や経営成績を明らかにするために作成されるものです。
したがって親会社と子会社との間(あるいは子会社同士)の取引や債権債務などは企業グループと内部での資金の移動に過ぎないため、連結財務諸表を作成するうえではこれらを相殺消去する必要があります。
ここでは連結会社間の貸付金・借入金の相殺消去についてみていきます。
親会社が子会社へ資金を貸し付けた場合、親会社にとっては貸付金となり子会社にとっては借入金となりますが、親会社と子会社とを一つの企業グループとし、この企業グループ全体の観点からみると企業グループ内部での資金の移動に過ぎず、企業グループが外部の誰かにお金を貸しているわけでも、企業グループ外部の誰かからお金を借りているわけでもありません。
ここで親会社が子会社に現金1,000円を貸し付けた場合のそれぞれの仕訳を見ていきましょう。親会社は子会社という別の法人へ1,000円貸し付けているわけですので『貸付金』という債権(資産)を計上します。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
貸付金 | 1,000 | 現金 | 1,000 |
いっぽう子会社は親会社から1,000円の現金を借りていますので『借入金』という債務(負債)が発生します。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
現金 | 1,000 | 借入金 | 1,000 |
しかし、親会社と子会社とを一つの企業グループとし、企業グループ全体の観点から見た場合、企業グループ内部で1,000円の移動はありますが、あくまでもグループ内部の話であり、企業グループが外部の第三者に債権を持っているわけでも、また債務を負っているわけでもありません。
企業グループ内部の資金の移動ですので連結の観点からは仕訳は必要ありません。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
仕訳なし |
したがって連結財務諸表を作成する過程では、下記の通り親会社と子会社がそれぞれ計上した『貸付金』『借入金』の仕訳を取り消し、連結会計上の『仕訳なし』の状態へ修正する必要があります。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
貸付金 | 1,000 |
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
借入金 | 1,000 |
上記の仕訳のうち現金は貸借同額となりますで、以下のように『貸付金』と『借入金』とを相殺消去する形に省略することができます。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
借入金 | 1,000 | 貸付金 | 1,000 |
(具体例-債権債務の相殺消去)
親会社A社は子会社S社へ1,000,000円の短期貸付金を有しており、また期中に受取利息として30,000円を受け取り、期末に未収利息として10,000円を計上している。
連結財務諸表を作成するために必要な連結修正仕訳を示しなさい。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
短期借入金 | 1,000,000 | 短期貸付金 | 1,000,000 |
受取利息 | 40,000 | 支払利息 | 40,000 |
未払利息 | 10,000 | 未収利息 | 10,000 |
連結会社間の貸付金と借入金は連結財務諸表を作成する過程でこれを相殺消去しますが、受取利息と支払利息、未収利息と未払利息も同様で利息の受取や支払いも企業グループ内での資金の移動に過ぎず企業グループ全体として考えると収益も費用も発生していませんのでこれらを相殺消去します。
したがって受取利息(子会社にとっての支払利息)の期中受取金額30,000円と決算時の見越計上額10,000円の合計40,000円、ならびに見越計上した際に計上した未収利息(子会社にとっての未払利息)の10,000円も相殺消去します。
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