剰余金の配当に関する連結修正仕訳(基本的な考え方)

株式会社は自社の株式を保有する株主に対して配当金を支払います。親会社は子会社の株式を保有しているわけですがら、子会社が支払った配当金を受け取ることになります。

この子会社の配当金を親会社が受け取るという取引は、親会社と子会社とをそれぞれ別々の事業体としてみた場合(個別会計上)は、親会社は配当金の受け取り(営業外収益)、子会社は配当金の支払い(剰余金の配当)を行ったという処理をおこなうこととなりますが、連結財務諸表を作成するうえでは修正(連結修正仕訳)が必要となります。

ここではなぜ修正が必要なのかを以下の設例をもとに説明していきます。

親会社A社が株式の100%を保有する子会社S社が配当金1,000円を現金で支払った。必要な連結仕訳を示しなさい。
1.個別会計上の仕訳

この設例では親会社A社は子会社S社の株式の100%を保有していますので、親会社A社は子会社の支払う配当金の1,000円全額を受け取り、これを『受取配当金』という収益の発生を表す勘定科目で記帳することになります。

(仕訳ー親会社の仕訳)
借方 金額 貸方 金額
現金 1,000 受取配当金 1,000

子会社の側から見れば配当金の支払いは『利益剰余金』の分配(減少)として処理します。

(仕訳ー子会社の仕訳)
借方 金額 貸方 金額
利益剰余金 1,000 現金 1,000
2.連結会計上の連結修正仕訳の必要性と処理

上記では親会社は子会社から配当金1,000円をうけとり、これを『受取配当金』という営業外収益の勘定科目を使って記帳し、収益の発生として処理しています。
いっぽう子会社では剰余金の会社外部への配当として処理し、現金を外部に支払っています。

しかし親会社と子会社を一つの企業グループとし、企業グループ全体の財政状態や経営成績を表す連結会計(連結財務諸表)では、子会社から親会社への配当金の支払いは企業グループ内部での資金の移動に過ぎません。すなわち企業グループの外部の利害関係者からこの取引を見た場合、企業グループ内部(同一のグループ内の親会社と子会社との間で)で単に資金が移動しただけであり、企業グループ全体として何からの収益が発生したわけでもなく、剰余金を企業外部には分配したわけでもありません(もちろん企業グループ全体として持っている現金が増減したわけでもありません)

したがって、連結会計上は親会社と子会社とがそれぞれ個別会計上行った取引を取り消す処理をおこなうことになります。
取り消す処理は親会社と子会社が個別上行った上記の仕訳の逆仕訳を行えばいいのですが、単純にそれぞれの逆仕訳を行うと次のようになります。

(仕訳ー親会社の仕訳の逆仕訳)
借方 金額 貸方 金額
受取配当金 1,000 現金 1,000
(仕訳ー子会社の仕訳の逆仕訳)
借方 金額 貸方 金額
現金 1,000 利益剰余金 1,000

上記の仕訳2つの仕訳の現金は貸借反対で同額となりますのでこれを相殺し、また『利益剰余金』は連結株主資本等変動計算書の勘定科目である『剰余金の配当』を使って記帳しますので、連結修正仕訳としては以下のように処理することになります。

(連結修正仕訳ー剰余金の配当)
借方 金額 貸方 金額
受取配当金 1,000 剰余金の配当 1,000

この仕訳により親会社が個別会計上で計上した受取配当金1,000円という収益と子会社が個別会会計上で計上した剰余金1,000円の外部への処分という取引は連結上においてそれぞれ取り消されることになります。

なお子会社に親会社以外の株主が存在する場合の剰余金の配当にかかる連結修正仕訳は剰余金の配当(非支配株主持分が存在する場合の連結仕訳)を合わせてご参照ください。

(関連項目)
のれんの償却時の仕訳の基礎(連結会計)
子会社の当期純利益の振替の基礎(支配獲得日後の連結)

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