子会社の当期純利益の振替の基礎(支配獲得日後の連結)

連結決算時において親会社は親会社と子会社とを1つの企業集団とし、企業集団としての財務諸表(連結財務諸表)を作成します。
連結財務諸表は親会社と子会社との個別財務諸表を合算して作成するのですが、当期純利益や当期純損失については注意が必要となります。

子会社には親会社のほかにも株主(親会社以外の株主を非支配株主といいます)が存在する場合がありますが、子会社のあげた利益のうちの親会社以外の株主の持分(非支配株主持分)に相当する金額は、企業集団の利益ではあっても企業集団を支配する親会社株主にとっての利益とは見ないため、これを区分するため、非支配株主持分の変動として処理することになります。
以下具体例をあげながら仕訳や連結損益計算書における表示についてみていきましょう。

子会社の当期純利益のうち、非支配株主に帰属する部分の仕訳と表示
親会社が株式の80%を持つ子会社の当期純利益が5,000円であった場合において、当期純利益を振り替えるために必要となる仕訳を示し、連結損益計算書における当期純利益以下の表示を示しなさい。

(解説・解答)

子会社の当期純利益は5,000円ですが、子会社には親会社以外の株主(非支配株主)がおり、その非支配株主の当該子会社の発行する株式の持分割合は20%(=100%-親会社持分割合80%)となっています。
上記の通り子会社の当期純利益のうち、非支配株主持分の持分に相当する金額については非支配株主持分として処理するため、その金額を企業集団としての利益から減額することが必要となります。当期純利益のうち非支配株主に帰属する金額の計算は当期純利益の金額に非支配株主の株主持分を乗じて算定します。

子会社の当期純利益5,000円×子会社に対する非支配株主の持分割合20%=1,000円

上記の非支配株主持分に相当する金額を当期純利益から非支配株主持分へと振り替えて、当期純利益を減額するとともに非支配株主持分を増額させることとなりますが、振替るための連結仕訳は以下の通りとなります。

(仕訳-当期純利益の振替)
借方 金額 貸方 金額
非支配株主に帰属する当期純利益 1,000円 非支配株主持分当期変動額 1,000

借方の『非支配株主に帰属する当期純利益』は子会社当期純利益のうち、非支配株主持分に相当する金額を連結上の当期純利益から減額するための科目です。上記では当期純利益を1,000円減額していますので、費用などと同じく借方に記帳します。
貸方の『非支配株主持分当期変動額』は純資産である非支配株主持分の増減を表す科目です。当期純利益から1,000円を非支配株主持分のへと振り替え、その金額だけ非支配株主持分(純資産)が増加しますので貸方に記帳します。

非支配株主持分に帰属する当期純利益は連結損益計算書においては当期純利益の下に表示し、当期純利益から非支配株主に帰属する当期純利益を減額し、親会社株主に帰属する当期純利益(親会社を中心とする企業集団としての利益)を表示します(連結財務諸表に関する会計基準 第39項(3)、連結財務諸表規則第65条4ほか参照)。

(連結損益計算書-非支配株主に帰属する当期純利益の表示)
当期純利益
非支配株主に帰属する当期純利益
親会社株主に帰属する当期純利益
5,000
△1,000
 4,000

(関連項目)
支配獲得日後の連結の流れ
開始仕訳の基礎(連結会計)

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