剰余金の配当(非支配株主持分が存在する場合の連結仕訳)

連結会計(連結財務諸表)では親会社と子会社を一つの企業グループとし、企業グループ全体の財政状態や経営成績を表すことを目的としています。
親会社と子会社とを一つの企業グループとしてみた場合、子会社から親会社への配当金の支払いは企業グループ内部での資金の移動に過ぎません。したがって、連結会計上は親会社と子会社とがそれぞれ個別会計上行った取引を取り消す処理をおこなうことになります(100%子会社の配当金に係る連結修正仕訳については剰余金の配当に関する連結修正仕訳(基本的な考え方)をご参照ください)。

ここでは子会社に親会社以外の株主(非支配株主といいます)がいる場合の処理について設例を使いながら簡単に見ていきます。
子会社に親会社以外の株主がいる場合、子会社は親会社のほか非支配株主に対してもそれぞれの株式の保有割合に応じて配当金を支払います。この子会社の支払った配当金のうち、非支配株主に支払った金額は非支配株主持分当期変動として処理することになります。具体的な処理は以下設例でご確認ください。

(設例)
親会社A社が株式の60%を保有する子会社S社が配当金1,000円を現金で支払った。連結会計上必要な仕訳を示しなさい。
1.個別会計上の仕訳

この設例では親会社A社は子会社S社の株式の60%を保有していますので、親会社A社は子会社の支払う配当金の1,000円のうち、その60%である600円を受け取り、これを『受取配当金』という収益の発生を表す勘定科目で記帳することになります。

(計算)
親会社の受け取る配当金:子会社の支払った配当金1,000円×親会社の株式の保有割合60%=600円

(仕訳ー親会社の仕訳)
借方 金額 貸方 金額
現金 600 受取配当金 600

子会社の側から見れば配当金の支払いは『利益剰余金』の分配(減少)として処理します。子会社の剰余金の減少額は子会社の支払った配当金全額1,000円となります。

(仕訳ー子会社の仕訳)
借方 金額 貸方 金額
利益剰余金 1,000 現金 1,000
2.連結会計上の連結修正仕訳の必要性と処理

子会社の行った剰余金の配当に関する連結修正仕訳は、親会社の個別会計上の受取配当金と子会社の個別会計上の剰余金の配当とを相殺すればよいのですが、
この設例のように子会社に親会社以外の非支配株主が存在する場合には、子会社の行った剰余金の配当(1,000円)について親会社へ支払った分(600円)と非支配株主へ支払った分(400円)とで分けて考える必要があります。

まず親会社へ支払った剰余金の配当600円分については、親会社と子会社がそれぞれ個別会計上行った仕訳を取り消す処理を行うことになります。それぞれの仕訳を示すと以下のようになります

(仕訳ー親会社が受け取った配当金の取り消し)
借方 金額 貸方 金額
受取配当金 600 現金 600
(仕訳ー子会社が支払った配当金の取り消し)
借方 金額 貸方 金額
現金 600 利益剰余金 600

上記の仕訳2つの仕訳の現金は貸借反対で同額となりますのでこれを相殺し、また『利益剰余金』は連結株主資本等変動計算書の勘定科目である『剰余金の配当』を使って記帳しますので、連結修正仕訳としては以下のように処理することになります。

(連結修正仕訳ー親会社の持分にかかる剰余金の配当)
借方 金額 貸方 金額
受取配当金 600 剰余金の配当 600

次に子会社が非支配株主へ支払った配当金400円の連結上と取り扱いですが、この400円については非支配株主持分の減少と考えます(子会社の当期純利益のうち非支配株主の持分に相当する金額は非支配株主持分の増加として処理しますが、その得た利益を原資として配当金の支払いを行った場合には非支配株主持分を減少させます)。

(連結修正仕訳ー非支配株主の持分にかかる剰余金の配当)
借方 金額 貸方 金額
非支配株主持分当期変動額 400 剰余金の配当 400

なお非支配株主持分の減少分は、上記のとおり連結株主資本等変動計算書の勘定科目である『非支配株主持分当期変動額』を使って記帳します。

上記より、子会社に非支配株主が存在する場合の剰余金の配当にかかる連結修正仕訳は、親会社持分にかかる仕訳と非支配株主持分にかかる仕訳とを合わせて以下の通りとなります。

(連結修正仕訳ー剰余金の配当)
借方 金額 貸方 金額
受取配当金 600 剰余金の配当 1,000
非支配株主持分当期変動額 400

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