サービス業における収益計上(役務収益)の仕訳・会計処理
旅行代理店や各種資格学校など、サービス業の売上収益の計上については、サービスの提供時において『役務収益』勘定などを使って収益計上することになります。
例えば、旅行代理店における収益の計上は旅行を行ったときに以下のように収益計上します(旅行代理店がツアーを催行し、代金として10,000円の現金を受け取った時)。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
現金 | 10,000 | 役務収益 | 10,000 |
なお、上記のようにすべてのサービスをある時点において一括して提供するのではなく、たとえば受験予備校におけるカリキュラムの消費のように一定の期間や複数回にわたって役務の提供が行われるような場合の収益計上の方法については、すべてのサービス提供が完了した時点で一括して役務収益を計上する方法とサービスの提供の進捗状況(度合い)などに応じて複数回に分割して収益計上する方法とがあります。後者の進捗状況などに応じた収益計上を行う場合には、決算時などにおいてサービスの進捗状況を見積り、当期にサービスの提供が完了した部分に対応する収益について『役務収益』を計上すると同時に、収益に対応する費用を『役務費用』として費用処理します。
(具体例1.-サービス業における収益計上・全てのサービス提供が完了した時点で一括して計上する方法)
1.当社の経営する専門学校では簿記検定2級の受験講座を開講している。この講座は12月より講義を開始し、翌年6月の合格を目指す全30回の講座である。講義の全受講料300,000円はすでに受講生より前金で受け取っており、受取時おいて『前受金 300,000円』として計上している。また講師に対する報酬などの諸費用150,000円もすでに支払いを完了しており、支払時に『仕掛品 150,000円』として計上している。
3月31日において決算日を迎えた。決算時における上記簿記講座に関する収益計上の仕訳を示しなさい(当社では簿記講座の収益計上について「すべてのカリキュラムが終了した時点で役務収益を計上する方法」を採用している)。なお上記の簿記検定2級の受験講座は、3月31日時点において全30回の講義のうち、18回分の講義を終了している。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
仕訳なし |
2.5月31日において上記の簿記講座のすべてのカリキュラムが終了した。収益認識に関する仕訳を示しなさい。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
前受金 | 300,000 | 役務収益 | 300,000 |
役務費用 | 150,000 | 仕掛品 | 150,000 |
この設問では「すべてのカリキュラムが終了した時点で役務収益を計上する方法」を採用しています。決算時においては簿記講座全30回のうち、18回分の講義しか完了しておらず、サービスの未提供の部分が未だに12回分残っています。したがって決算時には収益計上に関する仕訳は行わず、事前に受け取った受講料300,000円全額を『前受金』(流動負債)として翌期繰り越し、また事前に支払った諸費用150,000円は『仕掛品』(流動資産)として貸借対照表に記載し翌期に繰り越します。
(具体例2.-サービス業における収益計上・サービス提供度合に応じて計上する方法)
1.当社の経営する専門学校では簿記検定2級の受験講座を開講している。この講座は12月より講義を開始し、翌年6月の合格を目指す全30回の講座である。講義の全受講料300,000円はすでに受講生より前金で受け取っており、受取時おいて『前受金 300,000円』として計上している。また講師に対する報酬などの諸費用150,000円もすでに支払いを完了しており、支払時に『仕掛品 150,000円』として計上している。
3月31日において決算日を迎えた。決算時における上記簿記講座に関する収益計上の仕訳を示しなさい(当社では簿記講座の収益計上について「カリキュラムの進捗状況に応じて収益計上する方法」を採用している)。なお上記の簿記検定2級の受験講座は、3月31日時点において全30回の講義のうち、18回分の講義を終了している。
(計算過程)
収益計上額:前受金300,000円×18回/30回=180,000円
費用計上額:仕掛品150,000円×18回/30回=90,000円
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
前受金 | 180,000 | 役務収益 | 180,000 |
役務費用 | 90,000 | 仕掛品 | 90,000 |
2.5月31日において上記の簿記講座のすべてのカリキュラムが終了した。収益認識に関する仕訳を示しなさい。
(計算過程)
収益計上額:前受金300,000円-前期収益計上額180,000円=120,000円
費用計上額:仕掛品150,000円-前期費用計上額90,000円=60,000円
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
前受金 | 120,000 | 役務収益 | 120,000 |
役務費用 | 60,000 | 仕掛品 | 60,000 |
この設問では「カリキュラムの進捗状況に応じて収益計上する方法」を採用しています。決算時においては簿記講座全30回のうち、18回分の講義しか完了いるため、全期間における収益額300,000円のうち18/30にあたる180,000円を『前受金』から『役務収益』に振替えて収益計上します。また費用についても同様に仕掛品に計上されている費用のうち、18/30にあたる90,000円を『仕掛品』から『役務費用』に振替えて費用計上します。
なお、残りの金額については5月31日のすべてのカリキュラムの終了を待ってそれぞれ収益・費用として処理することになります。
(関連項目)
代金を前受した時の仕訳・記帳(サービス業の会計処理)
サービス業において費用を支払った時(役務費用)の仕訳・会計処理
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