損益勘定・損益振替の会計処理(帳簿の締め切り)

期末においては、決算整理ののち、当期の記帳を締め切り翌期以降の記帳にそなえるため総勘定元帳を締め切る作業(帳簿の締め切り)を行うことが必要となります。帳簿を締め切る手順は以下の通りとなります(英米式決算法を前提としています)。

1.収益・費用の損益勘定への振替(当ページ下記参照)
2.当期純利益の振替
3.資産・負債・純資産勘定の締め切り
4.繰越試算表の作成

帳簿を締め切るための最初の手続きとして、まず収益・費用グループの勘定科目の帳簿残高を『損益』勘定に振り替える処理を行います。
『損益』勘定とは、収益・費用グループの勘定の残高を集計するため、帳簿の締め切りの際に設けられる勘定科目です。

1.収益グループの勘定残高の損益勘定への振替

まず、収益グループに属する勘定科目の残高を損益勘定へと振り替える処理を見ていきます。
『売上』や『受取利息』などの収益グループに属する勘定科目は収益金額を貸方に記帳していくため、帳簿残高は貸方に残っていることになります(貸方残高)。したがって、この金額を『損益』勘定へ集計するためには、『売上』や『受取利息』勘定の借方から『損益』勘定の貸方へと振り替えてやればいいことになります。

たとえば、売上勘定の貸方の期末残高が1,000円の場合、これを損益勘定へ振り替えるための仕訳は以下のようになります。

(売上勘定の残高を損益勘定へと振り替えるための仕訳)
借方 金額 貸方 金額
売上 1,000 損益 1,000

上記の仕訳により、売上勘定の貸方残高は0円(貸方・借方が1,000円で同額)となり、損益勘定の貸方へ売上勘定の貸方残高1,000円が振り替えられたことになります。

2.費用グループの勘定残高の損益勘定への振替

次に費用グループに属する勘定科目の残高を損益勘定へと振り替える処理を見ていきます。
『仕入』や『給与』などの費用グループに属する勘定科目はその発生金額を借方に記帳していくため、帳簿残高は借方に残っていることになります(借方残高)。したがって、この金額を『損益』勘定へ集計するためには、『仕入』や『給与』勘定の貸方から『損益』勘定の借方へと振り替えてやればいいことになります。

たとえば、仕入勘定の借方の残高が800円の場合、これを損益勘定へ振り替えるための仕訳は以下のようになります。

(仕入勘定の残高を損益勘定へと振り替えるための仕訳)
借方 金額 貸方 金額
損益 800 仕入 800

上記の仕訳により、仕入勘定の借方残高は0円(貸方・借方が800円で同額)となり、損益勘定の借方へ仕入勘定の借方残高800円が振り替えられたことになります。

3.当期純利益の算定(損益勘定の貸借差額)

上記のように収益グループの勘定残高を損益勘定の貸方へ、費用グループの勘定残高を損益勘定の借方へ振り替えると、収益と費用との差額である利益(当期純利益)が損益勘定の貸借差額となって現れることになります。帳簿上において、当期純利益の算定は損益勘定の貸借差額から求めることができることになります。

上記の売上1,000円、仕入800円以外に当期の取引がないものと仮定した場合、損益勘定には、以下のように200円の貸借差額が発生します。これはこの会社の利益(当期純利益)を表すことになります。

(損益勘定)
借方 貸方
(仕入勘定より)800円 (売上勘定より)1,000円

上記の例では売上(貸方残高)から損益勘定へ振り替えた金額の方が、仕入(借方残高)から損益勘定へ振り替えた金額より200円多いため、損益勘定の貸方残高200円として当期純利益が算定されます。
いっぽう、費用勘定の残高の方が収益勘定の残高より多い場合は損益勘定は借方残高となり、これは当期純損失が計上されていることを表すことになります。

(具体例-損益振替)

決算整理後の収益・費用の勘定残高は以下の通りである。損益振替に関する仕訳を示し、損益勘定を作成しなさい。

(決算整理後の帳簿残高)
売上:30,000円(貸方)
受取手数料:2,000円(貸方)
仕入:12,000円(借方)
給与:8,000円(借方)
地代家賃:5,000円(借方)

(仕訳-損益振替)
借方 金額 貸方 金額
売上 30,000 損益 30,000
受取手数料 2,000 損益 2,000
損益 12,000 仕入 12,000
損益 8,000 給与 8,000
損益 5,000 地代家賃 5,000
(損益勘定)
相手勘定 借方金額 相手勘定 貸方金額
(仕入勘定より) 12,000円 (売上勘定より) 30,000円
(給与勘定より) 8,000円 (受取手数料勘定より) 2,000円
(地代家賃) 5,000円

上記の損益振替仕訳により、収益費用の帳簿残高はすべて損益勘定へと集計され、各帳簿残高は0円(貸借同額)となります。一方、損益勘定には貸方に収益グループの帳簿残高が、貸方に費用グループの帳簿残高が集計され、その差額(上記の設例では7,000円の貸方残)が当期純利益を表すこととなります。

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