長期割賦販売等における延払基準の適用(法人税法・基本的事項)
1.長期割賦販売等と延払基準適用の要件
代金を分割で支払う販売形態を割賦販売といいます。法人税法においては、たとえ割賦販売であったとしても実際に商品を引き渡した時に販売代金の全額を売上収益に計上することが原則となります(引渡基準)。
しかし、割賦販売は代金回収が商品の引き渡し日以後になるため、引渡基準によった場合、納税資金の確保等について支障をきたす恐れがあります。そのため、以下の条件を満たす長期割賦販売等(長期大規模工事に該当しない工事なども含む)については、割賦金の回収期日の属する事業年度において、それぞれ収益計上する延払基準を適用することが認められます(法人税法第63条第1項・第6項、法人税法施行令第127条等参照)。
1.月賦、年賦その他の賦払の方法により3回以上に分割して対価の支払を受けること。
2.その資産の販売等に係る目的物又は役務の引渡し又は提供の期日の翌日から最後の賦払金の支払の期日までの期間が2年以上であること。 3.販売等の目的物の引渡しの期日までに支払の期日の到来する賦払金の額の合計額がその資産の販売等の対価の額の3分の2以下であること。 |
延払基準を適用するためには、各事業年度の確定した決算において延払基準の方法により経理することが必要となります。延払基準を適用した長期割賦販売等について、いずれかの事業年度において延払基準の方法により経理しなかった場合においては、当該長期割賦販売等についてはそれ以後に延払基準を適用することはできません(他の延払基準を適用している長期割賦販売等については、延払経理を継続している限り延払基準を適用することは可能です。法人税法第63条第1項参照)。
2.延払基準による経理方法
延払基準の方法により経理する場合の各期の収益と費用は以下の金額となります(法人税法施行令第124条参照)。
収益=長期割賦販売等の対価の額×賦払金割合※ 費用=長期割賦販売等の原価の額(手数料含む)×賦払金割合※ ※ 賦払金割合=対価のうち当期に支払の期日が到来するもの/長期割賦販売等の対価 |
延払基準による経理方法では、上記の金額を毎期に収益・費用として計上することになります。
(具体例-延払基準)
当社は×1年度期首において、原価100,000円の商品を200,000円で販売した。代金は毎年3月末(期末)において40,000円ずつ5年にわたって受け取る契約である。
当該販売契約について、税務上の延払基準の適用要件を満たすかどうか判断し、もし要件を満たす場合は×1年度の収益および費用を算定しなさい。
1.延払基準適用の要件(長期割賦販売)を満たすかの判定
延払基準を適用するためには上記の長期割賦販売の要件をすべて満たすことが必要となります。したがってそれぞれの要件を満たすかどうかの判定を行います。
1.月賦、年賦その他の賦払の方法により3回以上に分割して対価の支払を受けること。 →毎期期末に40,000円ずつ5回に分けて支払うため要件をみたす。 2.その資産の販売等に係る目的物又は役務の引渡し又は提供の期日の翌日から最後の賦払金の支払の期日までの期間が2年以上であること。 3.販売等の目的物の引渡しの期日までに支払の期日の到来する賦払金の額の合計額がその資産の販売等の対価の額の3分の2以下であること。 |
したがって上記の取引は長期割賦販売等に該当し延払基準を適用することができます。
2.収益と費用の計上
×1年度における延払基準適用時の収益と費用の算定をおこないます。
賦払金割合=×1年期限到来分40,000円/長期割賦販売等の対価合計200,000円=0.2
収益=長期割賦販売等の対価合計200,000円×賦払金割合0.2=40,000円 費用=長期割賦販売等の原価の額100,000円×賦払金割合0.2=20,000円 |
したがって、×1年の売上収益は40,000円、売上原価は20,000円となります。なお、売上原価に計上されていない商品80,000円(=100,000円-20,000円)は棚卸資産として在庫に計上されます。
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