工事進行基準と工事完成基準の概要と適用関係

建設業における請負工事など、仕事の完成に対して対価が支払われる請負契約のうち、土木、建築、造船や一定の機械装置の製造(受注制作のソフトウェア含む)等、基本的な仕様や作業内容を顧客の指図に基づいて行うものの収益の認識については以下のような工事進行基準または工事完成基準が適用されます(工事契約に関する会計基準第4・5・6項参照)。

(工事進行基準と工事完成基準)
工事進行基準 工事進行基準とは、工事契約に関して、工事収益の総額・工事
原価の総額及び決算日における工事進捗度を合理的に見積り、これに応じて当期の工事収益及び工事原価を認識する方法ををいいます。

工事進行基準では、工事の進捗状況に応じて収益計上を行うため、たとえ完成前・引渡前の工事物件であっても、その進捗状況次応じて毎期収益計上が必要となります。

工事完成基準 工事完成基準とは、工事契約に関して、工事が完成し、目的物の引渡しを行った時点で、工事収益及び工事原価を認識する方法をいいます。

工事完成基準では、工事が完成し、その引き渡しが完了するまでの間は工事収益を認識しないため、完成までの期間に支出した工事原価について資産計上が必要となります。

建設業における受注請負工事などの工事契約に関しては、工事の進行途上であっても、その進捗部分について成果の確実性が認められる場合には工事進行基準を適用し、この要件を満たさない場合には工事完成基準を適用することになります(要件を満たす限りは工事進行基準を適用)。
成果の確実性が認められるとは、次の各要素について、信頼性をもって見積ることができる状況をいいます(工事契約に関する会計基準第9項参照) 。

(工事進行基準適用に関する3要件)
1.工事収益総額
2.工事原価総額
3.決算日における工事進捗度

1.工事収益総額を信頼性をもって見積もることができる状況とは、工事の完成見込みが確実であることが必要となります。このためには、施工者に当該工事を完成させるに足りる十分な能力があり、かつ、完成を妨げる環境要因が存在しないことが必要です。さらに工事契約において当該工事についての対価の定めがあることも必要となります(工事契約に関する会計基準第10・11項参照)。

2.信頼性をもって工事原価総額を見積るためには、工事原価の事前の見積りと実績を対比することにより、適時・適切に工事原価総額の見積りの見直しが行われることが必要となります(工事契約に関する会計基準第12項参照)。 またこの要件を満たす限り、通常、決算日における工事進捗度も信頼性をもって見積ることができると考えられます(進捗度の見積りにおいて原価比例法を採用する場合。工事契約に関する会計基準第13項参照)。
なお、工事契約に金額的な重要性がない等の理由により、個別にこうした管理が行われていない工事契約については、工事進行基準の適用要件を満たさないと判断されます(工事契約に関する会計基準第50・53項参照)。

(関連項目)
建設業会計の勘定科目・費用の一覧

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