建物等賃借契約に敷金を支出している場合(敷金償却)の仕訳

建物などの賃借契約において、内部造作など有形固定資産の除去に関する原状回復が契約で要求されている場合があります。この場合、本来であれば当該有形固定資産に関連する資産除去債務を計上しなければなりませんが、当該賃借契約に関連する敷金が資産計上されているときは、当該資産除去債務の負債計上及びこれに対応する除去費用の資産計上に代えて、当該敷金の回収が最終的に見込めないと認められる金額を合理的に見積り、そのうち当期の負担に属する金額を費用に計上(回収不能な敷金を償却)する方法を用いることができます(簡便法)。

なおこの処理による場合、当期の負担に属する金額の算定は、同種の賃借建物等への平均的な入居期間など合理的な償却期間に基づいて算定することになります(資産除去債務に関する会計基準の適用指針 第9項・第27項参照)。

(原状回復義務に関連する敷金の償却額の算定)
敷金の償却額=回収不能見込額(現状回復費用)÷平均的な入居期間
(具体例-資産除去債務・見積の変更)

当社は貸主との間で建物の賃貸借契約を締結し、X1年4月1日(期首)から賃借している。また当社は同日に現金100,000円を貸主に敷金として支払っている。
当社には当該建物に関する賃貸借契約終了時において、建物造作などを撤去する義務(原状回復義務)があり、敷金のうち20,000円についてはこの原状回復のための費用として充てられるため返還が見込めないと認められた。
当社は敷金が計上されているため、原状回復費用について、資産除去債務の負債計上及びこれに対応する除去費用の資産計上を行わず、平均的な入居期間(5年)により費用配分する方法を採用するものとしている。

この場合において、×1年4月1日(賃貸借開始日)、および×2年3月31日(決算日)における敷金の計上と償却に関する仕訳を示しなさい。

×1年4月1日の会計処理

支払った敷金の計上に関する仕訳をおこないます。

(仕訳)
借方 金額 貸方 金額
敷金 100,000 現金 100,000
×2年3月31日の会計処理

本設例では、敷金が計上されているため原状回復義務について簡便法(敷金を平均的な入居期間で償却する方法)を採用することとしています。
敷金のうち20,000円について原状回復費用に充てられるため返還が見込めないと認められたことから、これを平均的な入居期間(5年)で償却します。

(計算過程)
敷金の償却額:原状回復費用20,000円÷平均入居期間5年=4,000円

(仕訳)
借方 金額 貸方 金額
敷金の償却 4,000 敷金 4,000

(関連項目)
資産除去債務の算定(計上額の算定)と会計処理

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