圧縮記帳(直接控除方式)の仕訳・会計処理
圧縮記帳とは、国庫補助金や工事負担金・保険金などで取得した固定資産について、補助金や保険金で受け取った金銭相当額など(圧縮限度額)を固定資産の取得原価から減額し、圧縮損を計上することなどにより、補助金収入などに対する課税を一時的に回避する方法をいいます。
圧縮記帳の経理方法については一般的に以下の2つの方法があります。
直接減額方式 | 固定資産の取得原価を直接減額し、これを『固定資産圧縮損』(特別損失)として費用計上(損金経理)します。 | 当ページ下記参照 |
積立金方式 | 固定資産の取得原価を減額するのではなく、圧縮限度額の範囲内の金額を当該事業年度の確定した決算において積立金として積み立てます。 | 積立金方式 |
直接減額方式においては、圧縮限度額(各制度ごとに限度額は異なります)範囲内において、固定資産の取得原価を直接減額し、これを『固定資産圧縮損』(または建物圧縮損や機械圧縮損など)として費用計上することになります。たとえば、建物の取得原価のうち、1,000円の取得原価を減額する場合の記帳は以下のようになります
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
建物圧縮損 | 1,000 | 建物 | 1,000 |
また、以下のように固定資産から直接減額するのではなく『固定資産圧縮額』(または建物圧縮額や機械圧縮額)などの評価勘定を設けて間接的に控除することもあります。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
建物圧縮損 | 1,000 | 建物圧縮額 | 1,000 |
上記のような圧縮損を計上することにより、国庫補助金受贈益や保険差益に関する収益と圧縮損とを相殺し、補助金や保険差益などの利益に対する課税を回避することが可能となります。
なお、圧縮記帳を行った資産の減価償却は圧縮記帳後の取得原価をもとに行います。圧縮記帳により取得原価が減少した固定資産の毎年の減価償却額は、圧縮記帳を行わない資産のそれと比べて小さくなり、その分だけ課税所得は増額します。これは圧縮記帳により、国庫補助金取得時などにおける一時的な課税を翌期以降の減価償却期間へ繰り延べていることを意味しており、圧縮記帳は課税の免除ではなく、一時的な課税の繰り延べを許与するものであるといえます。
(具体例-圧縮記帳・直接減額方式)
1.×1年4月1日、当社は建物を取得するための国庫補助金10,000円を現金で受け取った。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
現金 | 10,000 | 国庫補助金受贈益 | 10,000 |
2.×1年4月10日、上記1の国庫補助金と自己資金を原資に建物20,000円を取得し、代金は現金で支払った。なお当該建物について国庫補助金10,000円分について圧縮記帳(直接減額方式)を行った。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
建物 | 10,000 | 現金 | 20,000 |
建物圧縮損 | 10,000 | - | - |
3.×2年3月31日決算日において、上記建物の減価償却費の計上を行った。なお当該建物の減価償却費の算定は定額法で行い、耐用年数は4年(償却率0.250)として計算するものとする。
(計算過程)
建物減価償却費:(取得原価20,000円-圧縮額10,000円)×0.250×12/12=2,500円
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
減価償却費 | 2,500 | 減価償却累計額 | 2,500 |
上記1において、国庫補助金を受け取ることにより受贈益が発生しますが、上記2において圧縮損を計上することにより、受贈益と圧縮損を相殺し、課税を回避することができます。
ただし、圧縮記帳を行った固定資産の減価償却は圧縮記帳後の価額をもとに行いますので、圧縮記帳を行わなかった場合に比べ、毎期の減価償却費は少なくなりその分だけ利益(課税所得)は大きくなります。これは圧縮記帳よってもらたらされる税務上の効果が課税免除ではなく課税猶予であることを意味しています。
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