勤務費用と利息費用の計算と仕訳

退職給付とは、従業員などが一定の期間にわたり労働を提供したこと等の事由に基づいて、退職以後に支給される給付をいいます(退職給付に関する会計基準第3項参照)。
また退職給付債務とは、退職給付のうち、認識時点までに発生していると認められる部分を割り引いたものをいいます(退職給付に関する会計基準第6項参照)。

仮に年金資産や差異などがないものと仮定した場合、1年間の退職給付債務の増加額は以下の2つの要素に分解することができます。

勤務費用 勤務費用とは、1期間の労働の対価として発生したと認められる退職給付をいい、当期に発生したと認められる額を割り引いて計算します。
利息費用 利息費用とは、割引計算により算定された期首時点における退職給付債務について、期末までの時の経過により発生する計算上の利息をいいます。

退職給付債務は割引計算によって算定されます。勤務費用は当期に発生したと認められる額を当期末から退職時までの期間に応じて割引計算し、利息費用は期首の退職給付債務に割引率を乗じて算定します(詳細は下記具体例でご確認ください)。

個別財務諸表上、退職給付債務は年金資産等必要な項目を増減した後、『退職給付引当金』として貸借対照表上の固定負債の部に計上されます(退職給付に関する会計基準第39項(1)(3)参照)。
また、勤務費用や利息費用など退職給付引当金の繰入額については『退職給付費用』として損益計算書上、売上原価又は販売費及び一般管理費に計上します(退職給付に関する会計基準第14・28項参照)。

(具体例-勤務費用・利息費用の計算)

A社員の全勤務期間を5年(当期末までに3年経過)、退職時一時金の見込額を1,000,000円(毎期同額発生するものとする)、割引率を2%、年金資産・差異等はないものとした場合、A社員に係る当期の退職給付に関する勤務費用と利息費用を算定し、必要な仕訳を示しなさい。

(計算過程)

1.勤務費用の計算

当期に発生した退職給付の見込額:1,000,000円×1年/5年=200,000円
当期末から退職時までの期間:5年-3年=2年

∴勤務費用:200,000円/(1+0.02)^2年=192,234円

2.利息費用の計算

当期首までに発生した退職給付の見込額:1,000,000円×2年/5年=400,000円
当期首から退職時までの期間:5年-2年=3年
当期首の退職給付債務:400,000円/(1+0.02)^3年=376,929円

∴利息費用:376,929円×0.02=7,538円

(仕訳)
借方 金額 貸方 金額
退職給付費用 192,234 退職給付引当金 199,772
退職給付費用 7,538

上記仕訳の退職給付費用については理解のため勤務費用と利息費用と区分していますが、まとめて「退職給付費用 199,772円」としても構いません。
退職給付費用は損益計算書上、売上原価又は販売費及び一般管理費に計上します(退職給付に関する会計基準第14・28項参照)。

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