外貨建満期保有目的債券の換算について

外貨建て満期保有目的債券は、外貨による取得価額を決算時の為替レート(CR)により円換算した額を貸借対照表価額とし、決算時の換算によって生じた差額は為替差損益として処理します(外貨建取引等会計処理基準一2(1)3イ・一2(2)等参照)。

(外貨建満期保有目的債券の換算-償却原価法を適用しない場合)
期末評価額=外貨による取得価額×決算時の為替レート(CR)

なお、外貨建満期保有目的債券に償却原価法を適用している場合は、外貨による償却原価(取得価額+償却額)を決算時の為替レート(CR)により円換算した額を貸借対照表価額とし、外貨による当期償却額に期中平均レート(AR)を乗じた金額を利息調整額(『有価証券利息』勘定)として処理し、償却原価(決算時の為替レート)から帳簿価額※と上記の利息調整額の合計額とを控除した額を当期の為替差損益として処理します(外貨建取引等会計処理基準注解・注9、外貨建取引等の会計処理に関する実務指針13等参照)。

(外貨建満期保有目的債券の換算-償却原価法を適用する場合)
1:期末評価額=外貨による償却原価×決算時の為替レート(CR)

2:当期償却額(有価証券利息)=外貨による当期償却額×期中平均レート(AR)

3:為替差損益=上記1-(上記2+決算整理前帳簿価額※)

※ 決算整理前の帳簿価額は、債券は取得価額に取得時のレート(HR)を乗じたもの(当期取得の場合)、または前期末の貸借対照表価額をいいます。

(具体例1-満期保有目的債券の換算・償却原価法適用なし)

1.×1年度期首においてA社社債を50ドルで取得し、代金は現金で支払った。A社社債取得時の為替レート(HR)は1ドル100円であった。当社はA社社債を満期まで保有する目的で取得しており満期保有目的債券として区分している。

(計算過程)
A社社債の取得原価:50ドル×100円=5,000円

(仕訳・取得時)
借方 金額 貸方 金額
投資有価証券 5,000 現金 5,000

2.×1年度決算期を迎えた。A社社債の期末時点における時価は53ドルであり、期末時の為替レート(CR)は1ドル120円であった。A社社債の期末評価に関する仕訳を示しなさい。

(計算過程)
A社社債の期末評価額(円貨):50ドル×120円=6,000円
為替差損益:期末6,000円-取得時5,000円=1,000円

(仕訳・決算時)
借方 金額 貸方 金額
投資有価証券 1,000 為替差損益 1,000

満期保有目的債券は時価評価は行いませんが決算時の為替レートによる円貨額を貸借対照表価額とし、換算差額は為替差損益(営業外損益)として処理します。

(具体例2-満期保有目的債券の換算・償却原価法適用あり)

1.×1年度期首においてB社社債を80ドルで取得し、代金は現金で支払った。B社社債取得時の為替レート(HR)は1ドル100円であった。なお、B社社債の額面金額100ドルであり、額面金額と取得価額との差額は金利の調整と認められるため償却原価法(定額法)を採用している。B社債の満期は×4年度末(満期まで4年)であり、満期保有目的債券として区分する。

(計算過程)
B社社債の取得原価:80ドル×100円=8,000円

(仕訳・取得時)
借方 金額 貸方 金額
投資有価証券 8,000 現金 8,000

2.×1年度決算期を迎えた。B社社債の期末時点における時価は88ドルであり、期末時の為替レート(CR)は1ドル120円、期中平均レート(AR)は110円であった。B社社債の期末評価に関する仕訳を示しなさい。

(計算過程)
B社社債の償却原価法適用時の償却額(外貨額):(100ドル-80ドル)÷4年=5ドル
B社社債の償却原価法適用時の償却額(円貨額):5ドル×AR@110円=550円
B社債評価額:(取得原価80ドル+償却原価5ドル)×CR@120円=10,200円
為替差損益:10,200円-(8,000円+550円)=1,650円

(仕訳・決算時)
借方 金額 貸方 金額
投資有価証券 2,200 有価証券利息 550
為替差損益 1,650

償却原価法適用時の償却額は外貨による償却額に期中平均レート(AR)を乗じて算定します。

スポンサードリンク