資産負債法と繰延法について
税効果会計の適用方法には以下の2つの方法があります。なお、現行の制度会計では2つの方法のうち資産負債法を採用しています(個別財務諸表における税効果会計に関する実務指針第33項参照)。
資産負債法 | 資産負債法とは、会計上の資産又は負債の金額と税務上の資産又は負債の金額との間に差異があり、会計上の資産又は負債が将来回収又は決済されるなどにより当該差異が解消されるときに、税金を減額又は増額させる効果がある場合に、当該差異(一時差異)の発生年度にそれに対する繰延税金資産又は繰延税金負債を計上する方法をいいます。したがって、資産負債法に適用される税率は、一時差異が解消される将来の年度に適用される税率となります。
この方法では、将来において差異が解消する年度に税金を減額または増額させる効果の資産性・負債性に重点を置いて税効果会計を適用することになります。したがって、適用される税率は将来(差異が解消される年度)の税率となります(貸借対照表の観点から税効果会計を適用する方法といえます)。 |
繰延法 | 繰延法とは、会計上の収益又は費用の金額と税務上の益金又は損金の額に相違がある場合、その相違項目のうち、損益の期間帰属の相違に基づく差異(期間差異)について、発生した年度の当該差異に対する税金軽減額又は税金負担額を差異が解消する年度まで貸借対照表上、繰延税金資産又は繰延税金負債として計上する方法をいいます。したがって、税効果会計に適用される税率は期間差異が発生した年度の課税所得に適用された税率となります。
この方法では、法人税等の期間配分を通じ、差異が発生した現在の年度の当期純利益と法人税等との対応関係を重視して税効果会計を適用することになりますので、適用される税率は現在(差異が発生した年度)の税率となります(損益計算書の観点から税効果会計を適用する方法といえます) |
上記の2つの方法では、税効果会計適用の際に使用される税率が異なります。資産負債法(現行の制度会計での方法)では差異が解消する将来の年度の税率、繰延法では差異が発生した年度の税率が適用されます。
したがって税率変更があった場合、繰延法では適用税率の修正の必要はありませんが、資産負債法では適用税率の修正を行う必要があります。
(具体例)
x1年において将来減算一時差異10,000円が発生したとき、×1年度末および×2年度末の繰延法及び資産負債法を適用した時の繰延税金資産の額をそれぞれ求めなさい。なお、法定実効税率は×1年末では40%であったが、×2年度において税率が変更され50%となっている(差異は上記以外にはないものとする)。
×1年度の繰延税金資産 10,000円×40%=4,000円 ×2年度の繰延税金資産 繰延法では、差異が発生した年度の法定実効税率を適用しますので、その後に税率変更があっても繰延税金資産の調整は必要ありません。したがって、×1年度と×2年度の繰延税金資産の計上額は同額となっています。 |
×1年度の繰延税金資産 10,000円×40%=4,000円 ×2年度の繰延税金資産 資産負債法では、差異が解消する将来の年度の法定実効税率を適用しますので、差異発生後に税率変更があった場合はこれを調整する必要があります。したがって、×2年の繰延税金資産計上額は税率変更後の50%を適用して算定します。 |
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