売価還元低価法の仕訳・会計処理

期末商品の評価方法について売価還元法を採用している場合であっても、期末における商品の正味売却価額が帳簿価額よりも下落している場合には、当該正味売却価額をもって貸借対照表価額とすることが必要となります。
ただし、商品の値下額等が売価合計額に適切に反映されている場合には、次に示す値下額及び値下取消額を除外した売価還元法の原価率により求められた期末棚卸資産の帳簿価額は、収益性の低下に基づく簿価切下額を反映したものとみなし、この価額をもって期末商品の貸借対照表価額とすることができます。このような期末商品の評価方法を売価還元低価法といいます(棚卸資産の評価に関する会計基準13参照)。

(売価還元低価法の原価率の算定)
原価率=A÷B

A=期首繰越商品原価+当期受入原価総額
B=期首繰越商品小売価額+当期受入原価総額+原始値入額+値上額-値上取消額※

期末商品原価=期末商品売価×原価率

(※売価還元原価法の原価率では、上記計算式のBの金額は以下のようになります

B=期首繰越商品小売価額+当期受入原価総額+原始値入額+値上額-値上取消額-値下額+値下取消額)

上記のとおり、売価還元低価法では原価率を算定する際の分母の売価は、値下げを行う前の売価を使用し、値下前の原価率を算定します。この値下前の原価率を値下後の商品売価に乗じて期末商品の評価額を算定することになります。

(売価還元低価法における商品評価額)
期末商品の評価額=期末商品売価×(値下げ前の)原価率

売価還元低価法の会計処理

売価還元低価法を採用した時の会計処理には、商品評価損を計上する方法と商品評価損を計上しない方法との2通りの方法があります。それぞれの処理は以下のようになります。

(具体例1-売価低下法・商品評価損を計上するケース)

スーパーを経営している当社では、期末商品の評価に関し売価還元低価法を採用している。以下の商品在庫に関するデータから決算整理仕訳を示しなさい。

(商品データ)
期首商品原価:5,000円
当期商品仕入高:75,000円
原資値入額:49,000円
値上額:2,500円
値上取消額:3,500円
値下額:4,000円
値下取消額:1,000円
期末商品帳簿売価:10,000円
期末商品実地売価:9,000円

(計算過程)
売価還元低価法において、商品評価損を計上する場合は、まず売価還元原価法により期末商品を評価します。棚卸減耗分はこの売価還元原価法原価率を乗じて算定します。

売価還元原価法原価率=(5,000円+75,000円)÷(5,000円+75,000円+49,000円+2,500円-3,500円-4,000円+1,000円)=0.64
期末商品帳簿原価=10,000円×0.64=6,400円
期末商品実地原価=9,000円×0.64=5,760円
棚卸減耗費=(10,000円-9,000円)×0.64=640円

商品評価損は実地棚卸売価に売価還元原価法原価率を乗じた金額と、売価還元低価法原価率を乗じた金額との差額として算定されます。

売価還元低価法原価率=(5,000円+75,000円)÷(5,000円+75,000円+49,000円+2,500円-3,500円)=0.625
売価還元低価法原価率による期末商品原価=9,000円×0.625=5,625円
商品評価損=5,760円-5,625円=135円

(仕訳・決算時)
借方 金額 貸方 金額
繰越商品 5,625 仕入 6,400
棚卸減耗費 640
商品評価損 135
(具体例2-売価低下法・商品評価損を計上しないケース)

スーパーを経営している当社では、期末商品の評価に関し売価還元低価法を採用している。以下の商品在庫に関するデータから決算整理仕訳を示しなさい。

(商品データ)
期首商品原価:5,000円
当期商品仕入高:75,000円
原資値入額:49,000円
値上額:2,500円
値上取消額:3,500円
値下額:4,000円
値下取消額:1,000円
期末商品帳簿売価:10,000円
期末商品実地売価:9,000円

(計算過程)
売価還元低価法において、商品評価損を計上しない場合は、売価還元低価法の原価率のみを使用し期末商品を評価します。棚卸減耗分も売価還元低価法原価率を乗じて算定します。

売価還元低価法原価率=(5,000円+75,000円)÷(5,000円+75,000円+49,000円+2,500円-3,500円)=0.625
期末商品帳簿原価=10,000円×0.625=6,250円
期末商品実地原価=9,000円×0.625=5,625円
棚卸減耗費=(10,000円-9,000円)×0.625=625円

(仕訳・決算時)
借方 金額 貸方 金額
繰越商品 5,625 仕入 6,250
棚卸減耗費 625

棚卸減耗分があるとき、商品評価損を計上する場合は、減耗分の売価に売価還元原価法原価率を乗じて棚卸減耗費を算定するのに対し、商品評価損を計上しない場合は、減耗分の売価に売価還元低価法原価率を乗じて棚卸減耗費を算定しする点にご注意ください。

(関連項目)
棚卸減耗費の仕訳・会計処理

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