移動平均法(棚卸資産の評価方法)の仕訳・会計処理
棚卸資産の評価方法(払出単価の決定方法)のうち、平均原価法とは、棚卸資産の評価に関する会計基準6-2において以下のように規定しています。
平均原価法 | 取得した棚卸資産の平均原価を算出し、この平均原価によって期末棚卸資産の価額を算定する方法。
なお、平均原価は、総平均法又は移動平均法によって算出する。 |
平均原価法とは、棚卸資産の払出単価や期末在庫の評価に関して、平均原価を使用する方法ですが、その使用される平均原価の算定方法として『総平均法』と『移動平均法』とがあります。このうち移動平均法とは、
棚卸資産を受け入れるたびに、その時点における受入資産と在庫資産の平均原価を算出し、この平均原価をもって商品の払出単価および在庫資産の価額を算定する方法 |
をいいます。移動平均法での平均原価は、棚卸資産を受け入れる都度、受入資産の取得原価と在庫資産の金額との合計を、受入資産の数量と在庫資産の数量の合計で除し、その時点における棚卸資産の1単位あたりの平均原価を算出し、これを払出単価や在庫の評価に使用することになります。
平均原価=(受入棚卸資産取得原価+在庫棚卸資産金額)/(受入棚卸資産数量+在庫棚卸資産数量) |
移動平均法は、払出資産の単価を随時把握することはできますが、受入の都度、平均原価の算定が必要であり、実務的に手間のかかる方法であるといえます(総平均法であれば平均原価の算定は期末の1度で済むため事務的に簡便な処理が可能です。詳細は総平均法(棚卸資産の評価方法)の仕訳・会計処理をご参照ください)。
(具体例-移動平均法)
当社の商品の受入・払出の状況は以下の通りであった。商品有高帳を作成し、3月31日の決算整理仕訳を示しなさい。なお当社では、棚卸資産の評価方法として移動平均法を採用している。
4月1日(期首):100個(@110円) 6月8日:仕入 100個(@100円) 7月31日:売上 50個 10月9日:仕入 50個(@101円) 1月21日:売上 150個 |
(計算過程)
移動平均法では、商品を受け入れる都度、受入商品原価と在庫商品金額の合計を、受入商品数量と在庫商品数量の合計で除し、その時点における商品1単位当たりの平均原価を算出し、この平均原価をもって商品の払出単価および在庫金額を評価します。当設例の商品1単位当たりの平均原価の計算と商品有高帳は以下の通りです。
6月8日仕入時における平均原価=(100×110円+100×100円)/(100個+100個)=@105円
10月9日仕入時における平均原価=(150×105円+50×101円)/(150個+50個)=@104円
3月31日時点における在庫金額=50×104円=5,200円
日付 | 概要 | 受入 | 払出 | 残高 |
4/1 | 繰越 | 100個(@110) | - | 100個(@110) |
6/8 | 仕入 | 50個(@101) | - | 200個(@105) |
7/31 | 売上 | - | 50個(@105) | 150個(@105) |
10/9 | 仕入 | 50個(@101) | - | 200個(@104) |
1/21 | 売上 | - | 150個(@104) | 50個(@104) |
3/31 | 繰越 | - | 50個(@104) | - |
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
繰越商品 | 5,200 | 仕入 | 5,200 |
なお最後の払出単価と期末在庫の平均原価とは原則として一致しますが、払出単価の端数処理を行った場合などに関しては払出単価と期末在庫の平均単価が端数処理分だけズレることがあります。
移動平均法のメリットとデメリット
移動平均法のメリットとデメリットは以下のようになります。会計学や財務諸表論などの試験では総平均法のメリット・デメリットとセットで出題されることが考えられますので、総平均法のメリット・デメリットと対比して押さえておかれるとよろしいかとおもわれます。
メリット | 期中においても棚卸資産の払出単価を算定するため、販売業績を常に把握・管理することが可能である。 |
デメリット | 異なる価格の棚卸資産を受け入れる都度、平均原価の算定が必要となるため、実務上の手間を要する。 |
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