個別法(棚卸資産の評価方法)の仕訳・会計処理

棚卸資産の評価方法(払出単価の決定方法)のうち、個別法とは、棚卸資産の評価に関する会計基準6-2において以下のように規定しています。

個別法 取得原価の異なる棚卸資産を区別して記録し、その個々の実際原価によって期末棚卸資産の価額を算定する方法。個別法は、個別性が強い棚卸資産の評価に適した方法である。

上記の通り、個別法では取得原価の異なる棚卸資産を区分して記録し、個々の商品ごとの実際の取得原価をもってその払出単価や期末在庫評価を行う方法です。このような在庫管理は、実務上において非常に手間のかかる方法ですので、宝石や絵画・骨董、あるいは不動産など、個別性の高い商品などを扱う場合にのみ採用される方法であるといえます。

(具体例-個別法)

宝石商を営む当社の商品(宝石)の受入・払出の状況は以下の通りであった。期末在庫を算定し、3月31日の決算整理仕訳を示しなさい。なお当社では、扱う商品の個別性が非常に高いため、棚卸資産の評価方法として個別法を採用している。

(商品の受入・払出状況)
4月1日(期首):在庫なし
5月1日:宝石A(仕入価格30,000円)を仕入
6月1日:宝石B(仕入価格50,000円)を仕入
10月31日:宝石Bを販売
1月15日:宝石C(仕入価格40,000円)を仕入
3月31日(決算日):在庫は宝石Aと宝石Cであった。

(計算過程)
当社では個別法を採用していますので、個々の商品ごとに仕入価格を管理しておき、販売した商品の払出単価はその商品の実際の仕入価格を使用します。したがって、10月31日の宝石Bの払出単価は、宝石Bの実際の仕入価格である50,000円となります。また、期末在庫の評価は期末に残っている宝石Aと宝石Cの実際の仕入価格を使用しますので、期末在庫残高(期末商品棚卸高)は以下の金額となります。

期末商品棚卸高:30,000円(宝石A)+40,000円(宝石C)=70,000円

(仕訳・決算時)
借方 金額 貸方 金額
繰越商品 70,000 仕入 70,000

個別法のメリットとデメリット

上記の通り、個別法は個々の商品ごとに取得原価(仕入単価)を個別に管理し、商品の払出単価や期末在庫の評価は、個別管理されたそれぞれの商品の実際の仕入単価を使用して算定する方法です。個別管理の手間をかけてでもこの方法を採用する必要があると考えられるのは、宝石や絵画・骨董、あるいは不動産などの個別性の高い商品を扱う事業者に限られます。個別法を採用するメリット・デメリットとしては一般的に以下の点があげられます。

メリット 実際の取得原価を使用して払出単価を算定するので、実際のモノの流れと帳簿上の計算とが完全に一致します(モノの流れに計算上の仮定を使用しません)。したがって個々の商品販売における個別損益を正確に把握することが可能となります。
デメリット 個々の商品ごとの仕入単価を個別に管理するのは実務上手数を要します。また、同じ商品でも仕入単価の異なる在庫を複数有しているとき、どの商品を払い出すか選択することにより利益操作を可能とするおそれがあります。

(関連項目)
棚卸資産の取得原価の算定
棚卸資産の評価方法(払出単価の算定方法)について

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