金利スワップ(ヘッジ会計適用)の仕訳・会計処理

金利スワップとは、同一の通貨間において、変動金利と固定金利とを交換する取引であり、デリバティブ取引の一種です。
変動金利による金利変動リスクを解消することや、金利変動による投機的利益を目的としたものであり、同一通貨間で行われるものであるという特徴があります。
金利スワップの会計処理は、他のデリバティブ取引と同様に期末に時価評価し、時価評価差額を当期の損益として処理することになります(詳細は金利スワップの仕訳・会計処理をご参照ください)。

ただし、金利スワップを利用した取引がヘッジ会計の適用要件を満たす場合、時価評価差額を損益計算書に計上せず、純資産の部において翌期以降に繰り延べる処理(ヘッジ会計)を適用することができます。
(なお、金利スワップの特例処理に関しての詳細は金利スワップ(特例処理)の仕訳・会計処理をご参照ください)。

(具体例-金利スワップ・ヘッジ会計適用)

当社は、x1年4月1日に期間3年で100,000円を変動金利(TIBOR)で借入れ当座預金とした。当社では変動金利を固定金利に変換するため、LIBORの変動金利を受け取り、2.00%の固定金利を支払う金利スワップ契約(期間3年、想定元本100,000円)を締結した。借入金及び金利スワップの利息は、前年の4月1日の金利水準により翌年の3月31日に現金にて後払いされる。当社の決算日は3月31日である。当該取引はヘッジ会計の要件を満たしており、ヘッジ会計(繰延ヘッジ)を適用するものとする(特例処理および税効果会計は適用しません)。x1年4月1日及び各決算日の仕訳を示しなさい。

(金利スワップの前提条件)
日付 TIBOR LIBOR 金利スワップ時価
x1年4月1日 2.20% 2.00%
x2年4月1日 2.80% 2.50% 964
x3年4月1日 3.40% 3.00% 971
x4年4月1日 0

x1年4月1日(契約時)の仕訳

(x1年4月1日)
借方 金額 貸方 金額
当座預金 100,000 長期借入金 100,000

契約時は金利スワップに関する仕訳は行いません。借入金に関する仕訳のみを行います。

x2年3月31日(決算日・利払日)の仕訳

(計算過程)
まず、借入金利息に関しては変動金利(TIBOR 2.2%)にて支払う必要があります。
借入金支払利息:100,000円×2.2%=2,200円

また、固定金利(2.00%)支払・変動金利(LIBOR 2.00%)受取の金利スワップ契約を締結していますので、その差額の受け払いを行います。ただし、今回は変動金利と固定金利が一致していますので実際の金銭授受はありません。
金利スワップによる利息交換:100,000円×(2.00%-2.00%)=0円

金利スワップの時価は964円ですが、ここではヘッジ会計(繰延ヘッジ)を適用していますので、時価評価差額は損益に反映させず、純資産の部において翌期以降に繰り延べます。

(x2年3月31日)
借方 金額 貸方 金額
支払利息 2,200 現金 2,200
金利スワップ 964 繰延ヘッジ損益 964

金利スワップの時価評価差額は翌期首のx2年4月1日に洗い替え処理を行うこともできますが、本設例では行いません。

x3年3月31日(決算日・利払日)の仕訳

(計算過程)
前年と同様、借入金利息に関しては変動金利(TIBOR 2.8%)にて支払う必要があります。
借入金支払利息:100,000円×2.8%=2,800円

また、固定金利(2.00%)支払・変動金利(LIBOR 2.50%)受取の金利スワップ契約を締結していますので、その差額の受け払いを行います。今回は変動金利の方が大きいため、差額を受け取ることになります。
金利スワップによる利息交換:100,000円×(2.50%-2.00%)=500円

金利スワップの時価は971円であり、前年度と同様、評価差額を『繰延ヘッジ損益』として処理します。なお、期首に洗い替え処理をしていないため、前期末の時価と当期末の時価との差額の以下の金額を、新たに繰延ヘッジ損益として処理し、純資産の部において翌期に繰り延べます。
971円-964円=7円

(x3年3月31日)
借方 金額 貸方 金額
支払利息 2,800 現金 2,800
現金 500 支払利息 500
金利スワップ 7 繰延ヘッジ損益 7
長期借入金 100,000 1年以内返済長期借入金 100,000

借入金の返済期限が期末の翌日から1年以内となっていますので『1年以内返済長期借入金』または『短期借入金』に振り替えます。

x4年3月31日(決済日)の仕訳

(計算過程)
借入金利息に関しては変動金利(TIBOR 3.4%)にて、最後の利息を支払う必要があります。
借入金支払利息:100,000円×3.4%=3,400円

また、固定金利(2.00%)支払・変動金利(LIBOR 3.00%)受取の金利スワップ契約を締結していますので、その差額の受け払いを行います。今回も変動金利の方が大きいため、差額を受け取ることになります。
金利スワップによる利息交換:100,000円×(3.00%-2.00%)=1,000円

金利スワップ終了時において、資産計上されている金利スワップの消去が必要となります。

(x4年3月31日)
借方 金額 貸方 金額
支払利息 3,400 現金 3,400
現金 1,000 支払利息 1,000
繰延ヘッジ損益 971 金利スワップ 971
1年以内返済長期借入金 100,000 当座預金 100,000

上記の具体例は金融商品会計に関する実務指針設例24を参考に、数値を単純化し、これに加筆・解説・計算過程等を加えて作成しております。実務指針設例24も合わせてご参照ください。

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