金利スワップ(特例処理)の仕訳・会計処理

金利スワップとは、同一の通貨間において、変動金利と固定金利とを交換する取引であり、デリバティブ取引の一種です。
変動金利による金利変動リスクを解消することや、金利変動による投機的利益を目的としたものであり、同一通貨間で行われるものであるという特徴があります。
金利スワップの会計処理は、他のデリバティブ取引と同様に期末に時価評価し、時価評価差額を当期の損益として処理することになります(詳細は金利スワップの仕訳・会計処理をご参照ください)。

ただし、金利スワップを利用した取引がヘッジ会計の適用要件を満たし、かつ、以下のすべての要件を満たすときは、金利スワップを時価評価せず、その金銭の受払の純額等を当該資産又は負債に係る利息に加減して処理(特例処理)することができます(なお、売買目的有価証券及びその他有価証券は特例処理の対象としません。金融商品会計に関する会計基準注解 注14、同実務指針第177項・178項参照)。

(金利スワップ特例処理の条件)
1 金利スワップの想定元本と貸借対照表上の対象資産又は負債の元本金額がほぼ一致していること
2 金利スワップとヘッジ対象資産又は負債の契約期間及び満期がほぼ一致していること
3 対象となる資産又は負債の金利が変動金利である場合には、その基礎となっているインデックスが金利スワップで受払される変動金利の基礎となっているインデックスとほぼ一致していること
4 金利スワップの金利改定のインターバル及び金利改定日がヘッジ対象の資産又は負債とほぼ一致していること
5 金利スワップの受払条件がスワップ期間を通して一定であること(同一の固定金利及び変動金利のインデックスがスワップ期間を通して使用されていること)
6 金利スワップに期限前解約オプション、支払金利のフロアー又は受取金利のキャップが存在する場合には、ヘッジ対象の資産又は負債に含まれた同等の条件を相殺するためのものであること

上記1の条件に関しては、金利スワップの想定元本と対象となる資産又は負債の元本については、いずれかの5%以内の差異であれば、ほぼ同一であると考えて、この特例処理を適用することができます。なお、金利スワップについて特例処理の要件を満たさない場合であってもヘッジ会計の要件を満たすときは、繰延ヘッジの方法によりヘッジ会計を適用することができます(金利スワップの繰延ヘッジ処理に関しては金利スワップ(ヘッジ会計適用)の仕訳・会計処理をご参照ください)。

(具体例-金利スワップ・特例処理)

当社はx1年4月1日に期間5年、6か月LIBORプラス0.5%で100,000円の変動借入れを行い、当座預金とした。また、変動金利を固定金利に変換するため、LIBORプラス0.5%の変動金利を受け取り、2%の固定金利を支払う、期間5年、想定元本100,000円のスワップ契約を締結した。現在の市場レートを反映した変動金利は1.75%であり、会社は手数料として0.25%を上乗せした固定金利を支払うことになる。借入金及び金利スワップの利息は、いずれも後払いで9月30日と3月31日に現金で支払われる。決算日は、3月31日である。また、6か月LIBORは次のとおりであり、支払金利は支払日から6か月前の水準が適用される。上記の金利スワップ及び対象となっている借入金については、特例処理の適用条件を満たすものであり、特例処理を適用した場合の、借入日(4月1日)、最初の利払日(9月30日)、決算日(3月31日)の仕訳を示しなさい。

(LIBORの推移)
x1年4月1日 1.25%
x1年10月1日 1.62%

x1年4月1日(契約時)の仕訳

(x1年4月1日)
借方 金額 貸方 金額
当座預金 100,000 長期借入金 100,000

契約時は借入金に関する仕訳のみを行います。

x1年9月30日(利払日)の仕訳

(計算過程)
まず、借入金利息に関しては変動金利(1.75%(=LIBOR1.25%+0.5%))にて支払う必要があります。
借入金支払利息:100,000円×1.75×6月/12月=875円

また、固定金利(2.00%)支払・変動金利(LIBORプラス0.5%)受取の金利スワップ契約を締結していますので、その差額の受け払いを行います。今回は固定金利(2.00%)の方が変動金利(1.25%+0.5%)より大きいので差額を支払うことになります。
金利スワップによる利息交換:100,000円×(1.75%-2.00%)×6月/12月=-125円

(x1年9月30日)
借方 金額 貸方 金額
支払利息 875 現金 875
支払利息 125 現金 125

x2年3月31日(決算日・利払日)の仕訳

(計算過程)
利払日であることから半年分の借入金利息を変動金利(2.12%(=LIBOR1.62%+0.5%))にて支払う必要があります。
借入金支払利息:100,000円×2.12%×6月/12月=1,060円

また、固定金利(2.00%)支払・変動金利(LIBORプラス0.5%)受取の金利スワップ契約を締結していますので、その差額の受け払いを行います。今回は変動金利の方が大きいため、差額を受け取ることになります。
金利スワップによる利息交換:100,000円×(2.12%-2.00%)×6月/12月=60円

当設例では金利スワップについて特例処理を適用していますので、金利スワップは時価評価しません。したがって、決算時においても金利スワップの時価に関する仕訳は必要ありません。

(x2年3月31日)
借方 金額 貸方 金額
支払利息 1,060 現金 1,060
現金 60 支払利息 60

上記の具体例は金融商品会計に関する実務指針設例23を参考に、数値・各種条件を単純化し、これに加筆・解説・計算過程等を加えて作成しております。実務指針設例23も合わせてご参照ください。

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