債券先物取引の仕訳・会計処理
先物取引とは将来の一定期日における取引価格を現時点において約定する取引であり、デリバティブ取引の一種です。
債券先物取引は、国債などの債券を対象にした先物取引であり、将来の一定期日にあらかじめ定められた価格で債券を売買することを現時点において約定する取引をいいます。
債券先物取引の会計処理における主な特徴としては以下の点があげられます(金融商品に関する会計基準第25項等参照)。
1 | 契約時において、取引の保証金として証券会社等に委託証拠金を支払う |
2 | 決算時において、相場変動による正味の債権債務を時価評価し、評価差額は原則として、当期の損益とする。 |
3 | 決済時において、反対売買による差金決済を行う |
先物取引のようなデリバティブにおいては、決算時において相場変動による債権債務(決算時におけるポジションの有利不利)を時価評価し、評価差額は当期の損益として処理する必要があります(だたし、ヘッジ会計が適用されるものは除きます)。
また、先物取引は通常、反対売買による差金決済(買建ての場合は売り、売建ての場合は買うことにより差額のみをやり取りする)を行いますので現物のやり取りは行いません。
(具体例-債券先物取引)
1.x1年4月1日において、国債先物10口を1口95円で買建て、委託証拠金として50円を現金で支払った。なお、当社の決算日は毎年3月31日である。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
先物取引差入保証金 | 50 | 現金 | 50 |
契約時においては証券会社などに保証金として委託証拠金(『先物取引差入保証金』勘定)を支払います。現物のやり取り等は行わないため、保証金の支払以外の仕訳は行いません(債券を受け取る権利と代金支払義務とはオフバランスされます)。
2.x2年3月31日に決算日を迎えた。なお決算日時点における国債先物の時価は1口97円であった。
(計算過程)
先物損益:97円×10口-95円×10口=20円
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
債券先物 | 20 | 先物損益 | 20 |
先物の時価相場が97円となっています。会社は95円で買建てているため、相場変動に関わらず95円で買うことができます。したがって現時点で決済した場合95円で買って97円で売ることにより2円の差益を得ることができますので、このポジションを時価評価し、評価差額は当期の損益とします。
なお、勘定科目は正味の債権債務を『債券先物』または『先物取引差金』などとし、損益は『先物損益』(営業外損益)とします。
3.x2年4月1日において、期首につき振替処理を行った。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
先物損益 | 20 | 債券先物 | 20 |
債券先物の決算時の評価差額は翌期首に振替処理を行います。
4.x2年5月31日において、債券先物の時価が99円となったため、反対売買の差金決済を行った。決済金及び委託証拠金は現金で受け取った。
(計算過程)
先物損益:99円×10口-95円×10口=40円
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
現金 | 40 | 先物損益 | 40 |
現金 | 50 | 先物取引差入保証金 | 50 |
反対売買による差金決済のため、差額のみが決済されます。差益は『先物損益』(営業外損益)として当期の損益となります。また、契約時に差し入れた保証金である『先物取引差入保証金』が返却されます。
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