剰余金の配当時の仕訳
配当とは、会社の利益を株主に分配するをいいます。分配の原資はおもに繰越利益剰余金(利益の未処分残高)が対象となりますが、その他資本剰余金(資本金や資本準備金の取崩しによって生じる剰余金)などを分配の原資とすることもできます。
配当は株主総会決議などで決定されますが、実際に配当金が支払われるのは後日となるので、配当額は『繰越利益剰余金』または『その他資本剰余金』勘定という純資産勘定から『未払配当金』勘定という負債勘定への振替処理を行います。
(具体例-利益剰余金の配当)
1.株主総会において、繰越利益剰余金を原資として下記の通り剰余金の配当が決議された。
配当金1,000円、利益準備金100(金額の決定は下記参照ください)。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
繰越利益剰余金 | 1,100 | 未払配当金 | 1,000 |
- | - | 利益準備金 | 100 |
2.後日、配当金1,000円を当座預金口座から支払った。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
未払配当金 | 1,000 | 当座預金 | 1,000 |
準備金の積立額の計算
配当は株主総会や取締役会決議などで行われますが、会社が株主への剰余金の配当を自由に行えることとした場合、会社の財政基盤が弱体化し、債権者などの株主以外の利害関係者の利益を害することになりかねません。よって株主以外の利害関係者の利益保護のため、会社法では、剰余金の配当を行う際には、配当金の10分の1を資本金の4分の1に達するまで、資本準備金または利益準備金として積み立てなければならない旨の規定が置かれています(会社法第445条第4項)。
剰余金の積立必要額をまとめると下記の通りになります。下記のうちいずれか少ない額を準備金として積み立てる必要があります。
1 | 資本金×1/4-(資本準備金+利益準備金) |
2 | 配当金×1/10 |
(具体例-剰余金の分配・利益準備金の算出)
株主総会において、繰越利益剰余金を原資として下記の通り剰余金の配当が決議された(なお会社の純資産の内訳は、資本金4,000円、資本準備金200円、利益準備金200円である)。
配当金1,000円、利益準備金は会社法規定額、残額は繰越。
(計算過程)
利益準備金の積立額は以下のうちの少ない額
1.資本金4,000円×1/4-(資本準備金200円+利益準備金200円)=600円
2.配当金1,000円×1/10=100円
したがって利益準備金の積立額は100円
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
繰越利益剰余金 | 1,100 | 未払配当金 | 1,000 |
- | - | 利益準備金 | 100 |
なお準備金の積立について、繰越利益剰余金(その他利益剰余金)を配当財源とした場合は利益準備金を積み立てますが、その他資本剰余金を配当財源とした場合は資本準備金を積み立てることになります。
(関連項目)
剰余金の配当時の源泉所得税の扱い
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