開始仕訳の基礎(連結会計)

連結決算日には親会社が親会社と子会社の個別財務諸表をもとに連結財務諸表を作成することになります(支配獲得日後の連結)。

連結財務諸表の作成は親会社と子会社との個別財務諸表を合算し、これに連結決算上必要な仕訳を加えることによって作成しますが、支配獲得日から前期の連結決算日までの間に行われてきた連結財務諸表を作成するための仕訳は、連結決算において個別財務諸表とは分離して行うものである(連結精算表上で行うものである)ため、親会社や子会社の個別財務諸表には、過去に連結財務諸表作成のためにおこなった仕訳はいっさい反映されてはいません。

したがって、連結財務諸表を作成するにあたっては個別財務諸表を合算するとともに、まずこれまで連結決算で行ってきた仕訳を再現してやる必要があります。これを開始仕訳といいます。

ここでは支配獲得日後において連結財務諸表を作成するうえで必要な開始仕訳について、非常に簡単な数値を使いながらその基本的なカタチをご説明いたします。

数値例-開始仕訳の基本形

×1年3月31日、A社がB社の発行した株式の100%を150,000円で取得してB社を子会社とした。支配を獲得した日における両社の個別財務諸表が以下のようであったとき、支配獲得日において必要な連結上の仕訳を示しなさい。

A社の個別貸借対照表
諸資産 500,000 諸負債 400,000
乙会社株式 150,000 資本金 250,000
B社の個別貸借対照表
諸資産 100,000 資本金 100,000

なお、支配獲得日における乙社の諸資産の時価は120,000円であるものとする。また税効果については一切考慮する必要はないものとする。

×1年3月31日(支配獲得日)の連結修正仕訳

子会社となる乙社の諸資産について、簿価が100,000円となっていますが支配獲得日における時価は120,000となっており、時価と簿価とが異なっているため評価替えのための仕訳を行います。評価替えのための仕訳については時価120,000と簿価100,000円との差額20,000円を諸資産に追加で計上することにより、乙社の諸資産の帳簿価額を100,000円から120,000円へと修正します。

(仕訳-評価替えのための仕訳)
借方 金額 貸方 金額
諸資産 20,000 評価差額 20,000

親会社の子会社に対する投資と子会社の純資産とは、これを一つの企業集団としてみた場合、企業集団内部の資金移動にすぎません。したがって、連結財務諸表を作成するにあたり親会社の子会社に対する投資(甲社の所有している乙社株式150,000円)と子会社の純資産(乙社の資本金100,000円および評価差額20,000円)とを相殺することになります。

(仕訳-親会社の保有する子会社株主と子会社の純資産との相殺)
借方 金額 貸方 金額
資本金(乙社) 100,000 乙社株式 150,000
評価差額(乙社) 20,000
のれん 30,000

×2年3月31日(支配獲得日後、1年目の仕訳)の連結修正仕訳

×2年3月31日に支配獲得日後最初の連結決算日を迎えた。当期の連結財務諸表を作成するために必要な仕訳を示しなさい。
のれんの償却額は6,000円であるものとする(そのほかの事項については考慮する必要はない)。

支配獲得日後1年目の開始仕訳
×1年3月31日の支配獲得日に資本連結のための仕訳を行っておりますが、これらは連結精算表において行われており、親会社や子会社の個別財務諸表上は一切反映されておりません。したがって連結財務諸表を作成するうえで、過去に行った連結仕訳を再度再現してやる必要があります。これが開始仕訳です。
ここでは×1年3月31日に行った仕訳(評価替えの仕訳と投資と資本との相殺消去のための仕訳)を再度行えばよいことになります。

(仕訳-評価替えのための仕訳)
借方 金額 貸方 金額
諸資産 20,000 評価差額 20,000
(仕訳-投資と資本との相殺消去のための仕訳)
借方 金額 貸方 金額
資本金当期首残高 100,000 乙社株式 150,000
評価差額 20,000
のれん 30,000

なお開始仕訳の注意点としては、純資産勘定の科目については「〇〇当期首残高」というように、それぞれの科目名の後ろに当期首残高という文字を付け加えます。
上記の場合、資本金は純資産の科目ですので開始仕訳では「資本金当期首残高」という名称で仕訳を行います。

次に当期ののれんの償却に関する仕訳を行いますが、ここで当期の償却金額が6,000円であると与えられていますのでそのまま仕訳を切ります。

(仕訳-のれんの償却の仕訳)
借方 金額 貸方 金額
のれん償却 6,000 のれん 6,000

×3年3月31日(支配獲得日後、2年目の仕訳)の連結修正仕訳

×3年3月31日に支配獲得日後2年目の連結決算日を迎えた。当期の連結財務諸表を作成するために必要な仕訳を示しなさい。
のれんの償却額は6,000円であるものとする(そのほかの事項については考慮する必要はない)。

支配獲得日後2年目の開始仕訳
×2年3月31日と同様に、連結財務諸表を作成するためにこれまで行った仕訳を再度再現します。
まずは、×2年3月31日と同様に評価替えの仕訳と投資と資本との相殺消去のための仕訳を再度行います。

(仕訳-評価替えのための仕訳)
借方 金額 貸方 金額
諸資産 20,000 評価差額 20,000
(仕訳-投資と資本との相殺消去のための仕訳)
借方 金額 貸方 金額
資本金当期首残高 100,000 乙社株式 150,000
評価差額 20,000
のれん 30,000

次に×2年3月31日に行ったのれんの償却にかかる仕訳をおこないます。

(仕訳-のれんの償却の仕訳)
借方 金額 貸方 金額
利益剰余金当期首残高 6,000 のれん 6,000

前期以前に行ったのれんの償却額は、前期の連結上の利益を減少させておりますので、開始仕訳では利益剰余金を減額します。開始仕訳では純資産項目は『○○当期首残高』という勘定科目で仕訳を切るのがルールですので、ここでは『利益剰余金当期首残高』という勘定科目を使用します。

連結修正仕訳はこれらをまとめて次のように仕訳することもできます。

(仕訳-連結修正仕訳)
借方 金額 貸方 金額
資本金当期首残高 100,000 乙社株式 150,000
利益剰余金当期首残高 6,000
評価差額 20,000
のれん 24,000

※のれんの金額24,000円は当初の金額30,000円-前期の償却額6,000円で算定します。

次に当期ののれんの償却のための仕訳を行います。

(仕訳-のれんの償却の仕訳)
借方 金額 貸方 金額
のれん償却 6,000 のれん 6,000

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