扶養控除金額について具体的な事例とその計算
所得税の計算において、納税者と一緒に生活している家族などがいる場合には、所得金額の計算上で一定の控除を受けることができます。これを扶養控除といいます。
1.所得税の計算において控除の対象となる扶養親族とは
上記のように、一緒に生活している(その生活費を払っている)家族などがいる場合には一定の控除を受けることができるのですが、生活費を払っていれば誰でもいいというわけではなく、扶養控除の対象とすることができる家族(控除対象扶養親族といいます)は所得税法において以下の要件に当てはまる者だけと限定されています。
1.親族のうち配偶者以外のもの(配偶者は配偶者控除などの対象となるため扶養控除の対象とはなりません)※。 2.納税者と生計を一にするものであること。 3.その年の合計所得金額が38万円以下であること(その扶養親族の収入が給与のみである場合は、給与収入の額面金額が103万円以下でるもの) 4.青色申告者の事業専従者として給与の支払いを受けているものでないこと又は白色申告者の事業専従者でないこと。 |
(※)上記1には、民法に規定される親族(血族6親等・姻族3親等)のほか、児童福祉法の規定により里親に委託された児童及び老人福祉法の規定により養護受託者に委託された老人であるものも含みます。
生計を一にするとは、日常の生活の資をともにする(生活のためのお金が一緒である)ことをいいます。この場合、必ずしも同居していない場合であっても学生の子など仕送りをしている場合なども含みます。
合計所得金額は少し難しい概念ですが、その年の利益と考えるとイメージしやすいかもしれません。なお、会社員やアルバイトなどお勤め先からお給料をもらっている場合、もらった給与の額面ではなく、もらった給与の額面金額から給与所得控除(給与収入から差し引きすることができる計算上の経費)を差し引いて所得金額を求めますが、給与所得控除はだれでも65万円以上は保証されていますので、給与所得を38万円以下とするためには実際にもらった給与の額面は103万円以下である必要があります。
2.扶養控除で控除できる金額
扶養控除は養っている家族など(控除対象扶養親族)がいる場合に受けることのできる所得控除ですが、所得から控除できる金額はその扶養親族の年齢などより次のように異なってきます。
扶養親族の分類 | 控除金額 |
一般 (12月31日時点で16歳以上のもの) |
38万円 |
特定 (12月31日時点で19歳以上22歳以下のもの) |
63万円 |
老人・同居老親以外 (12月31日時点で70歳以上) |
48万円 |
老人・同居老親 (12月31日時点で70歳以上) |
58万円 |
扶養親族の年齢については12月31日現在で判定します(年末時点で判定します)。
上記の表には15歳以下のものは含まれてはおりません。これは15歳以下の子については、児童手当(旧こども手当)の対象となるため、所得税(および住民税)の控除の対象からは外れています。
また老人扶養親族に関する控除については同居老親に該当するか否かで控除額が異なります。この同居老親とは、納税者またはその配偶者と同居している親や祖父母など(いわゆる直系尊属)をいいます。
3.扶養控除の金額算定の具体例
1.Aさんは生計を一とする親族として、配偶者(パート収入有り、合計所得金額50万円)および高校生の子(12月31日時点で17歳、合計所得金額0円)および中学生の子(12月31日時点で13歳、合計所得金額0円)がいます。Aさんの本年度の扶養控除の金額を求めなさい。
考え方
・配偶者は扶養控除の対象とはなりません:0円 したがって、Aさんの本年度の扶養控除の金額は:0円+38万円+0円=38万円 |
2.Bさんは生計を一とする親族として、配偶者(合計所得金額0円)および、配偶者の母(12月31日時点で80歳、合計所得金額は0円であり同居している)、大学生の長男(12月31日時点で21歳、合計所得金額0円)および大学生の次男(12月31日時点で19歳、アルバイト収入があり合計所得金額90万円)がいます。Bさんの本年度の扶養控除の金額を求めなさい。
考え方
・配偶者は扶養控除の対象とはなりません:0円 したがって、Bさんの本年度の扶養控除の金額は:0円+58万円+63万円+0円=121万円 |
なお、上記AさんBさんの配偶者については配偶者控除または配偶者特別控除の対象となる場合があります。
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