資産のグルーピングの基礎と配分計算(減損会計)

1.グルーピングの単位

資産の収益性を測定するにあたり、予想される将来キャッシュ・フローを単一の資産ごとに分類することができない場合があります。たとえば製造ラインにおいて複数の機械が一体となって一つの製品を製造している場合などは、予想される将来キャッシュ・フローと各個別の機械との関係は必ずしも明確ではありません。
このように複数の資産が一体となって独立したキャッシュ・フローを生み出す場合には、減損損失を認識するかどうかの判定及び減損損失の測定に際して、合理的な範囲で資産のグルーピングを行う必要があります(固定資産の減損に係る会計基準 二6(1)参照)。

グルーピングの方法を一義的に示すことは困難ですが、実務的には管理会計上の区分や投資の意思決定(資産の処分や事業の廃止に関する意思決定を含む)を行う際の単位等を考慮してグルーピングの方法を定めることになると考えられます。例えば、以下のような手順により資産のグルーピングが行われると考えられます(固定資産の減損に係る会計基準の適用指針 第7項参照)。

(1)企業は、例えば、店舗や工場などの資産と対応して継続的に収支の把握がなされている単位を識別し、グルーピングの単位を決定する基礎とする。この際、以下のような点を考慮する。
1.収支は必ずしも企業の外部との間で直接的にキャッシュ・フローが生じている必要はなく、例えば、内部振替価額や共通費の配分額であっても、合理的なものであれば含まれる。
2.継続的に収支の把握がなされているものがグルーピングの単位を決定する基礎になる。このため、収支の把握が、通常は行われていないが一時的に設定される単位について行われる場合(例えば、特殊原価調査など)は該当しない。
3.例えば、賃貸不動産などの1つの資産において、一棟の建物が複数の単位に分割されて、継続的に収支の把握がなされている場合でも、通常はこの1つの資産がグルーピングの単位を決定する基礎になる。

(2)企業は、(1)のグルーピングの単位を決定する基礎から生ずるキャッシュ・イン・フローが、製品やサービスの性質、市場などの類似性等によって、他の単位から生ずるキャッシュ・イン・フローと相互補完的であり、当該単位を切り離したときには他の単位から生ずるキャッシュ・イン・フローに大きな影響を及ぼすと考えられる場合には、当該他の単位とグルーピングを行う。

取締役会等において、資産の処分や事業の廃止に関する意思決定を行い、その代替的な投資が予定されていない資産や、将来の使用が見込まれていない遊休資産については、これを切り離しても他の資産又は資産グループの使用にほとんど影響を与えることがないため、重要なものについては、他の資産又は資産グループのキャッシュ・フローから概ね独立したキャッシュ・フローを生み出す最小の単位として取り扱うことになります。なお企業が将来の使用を見込んでいる遊休資産は、その見込みに沿って、グルーピングを行います(固定資産の減損に係る会計基準の適用指針 第8・71・72項参照)。

当期に行われた資産のグルーピングは、原則として、翌期以降の会計期間においても同様に行うことになります。また個別財務諸表作成上において行われた資産のグルーピングの単位は連結の見地から見直される場合があります(固定資産の減損に係る会計基準の適用指針 第9・10・75項参照)。

2.減損損失の配分

資産グループについて認識された減損損失は、帳簿価額に基づく比例配分等の合理的な方法により、当該資産グループの各構成資産に配分することになります(固定資産の減損に係る会計基準 二6(1)参照)。

(具体例-減損損失の配分)

当社の土地建物について減損の兆候が見られたため減損損失の認識の判定および減損損失の測定を行った。その結果、土地建物合わせて10,000円の減損損失を計上することになった。なお、当該土地建物(土地と建物)は一体となってキャッシュ・フローを生み出し、資産別のキャッシュ・フロー把握することはできないため、資産グループにおいて認識された減損損失を帳簿価額に基づいて土地と建物に配分するものとしている。
減損損失計上時の仕訳を示しなさい(減損の記帳は直接法によるものとする)。

土地の帳簿価額:30,000円
建物の帳簿価額:20,000円
資産グループの帳簿価額:50,000円(=土地30,000円+建物20,000円)
回収可能価額:40,000円
資産グループの減損損失:10,000円(=30,000円+20,000円-40,000円)

(計算過程)
資産グループにおいて計上された減損損失10,000円を土地と建物の帳簿価額に基づき配分します。

土地の減損損失:10,000円×土地の帳簿価額30,000円/資産グループの帳簿価額50,000円=6,000円
建物の減損損失:10,000円×建物の帳簿価額20,000円/資産グループの帳簿価額50,000円=4,000円

(仕訳)
借方 金額 貸方 金額
減損損失 10,000 土地 6,000
建物 4,000

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