資産除去債務の見積り変更時におけるの仕訳・会計処理

資産除去債務はそれが発生したときに、有形固定資産の除去に要する割引前の将来キャッシュ・フローを見積り、これを割引計算することによって算定することになります(資産除去債務に関する会計基準 第6項参照)。

この割引前の将来キャッシュ・フローに重要な見積りの変更が生じた場合、当該見積りの変更による調整額は、資産除去債務の帳簿価額及び関連する有形固定資産の帳簿価額に加減して処理します(資産除去債務に関する会計基準 第10項参照)。

(除去費用の見積もりが増加する場合の仕訳)
借方 金額 貸方 金額
固定資産 ※1 資産除去債務 ※1
(除去費用の見積もりが減少する場合の仕訳)
借方 金額 貸方 金額
資産除去債務 ※2 固定資産 ※2

(※1)(※2) 調整額は除去費用の見積り増減額を割引計算することによって算定します。

なお、割引前将来キャッシュ・フローの見積りの変更による調整額を算定する時に使用する割引率については、当該キャッシュ・フローが増加する場合と減少する場合とで以下のように異なります(資産除去債務に関する会計基準 第11項参照)。

キャッシュ・フロー 適用する割引率
増加する場合 見積変更時点での割引率を適用します。
減少する場合 過去の資産除去債務計上時の割引率を適用します。なお、過去に割引前の将来キャッシュ・フローの見積りが増加した場合で、減少部分に適用すべき割引率を特定できないときは、加重平均した割引率を適用します。
(具体例-資産除去債務・見積の変更)

当社はX1年4月1日(期首)に機械を現金100,000円で取得し、即日使用を開始した。当該機械の耐用年数は5年であり、残存価額を0円とする定額法で減価償却を行っている。なお当社には当該機械を使用後に除去する法的義務がある。当該機械の除去費用の見積もりと各時点における割引率は以下の通りであるものとした時、以下の各時点における資産除去債務に関する仕訳を示しなさい(当社の決算日は毎年3月31日であるものとする)。

時系列 将来の資産除去支出の見積もり 割引率
×1年4月1日 5年後の見積もり額は3,000円 3.0%
×2年3月31日 4年後の見積もり額は3,000円 3.0%
×3年3月31日 3年後の見積もり額は5,000円 4.0%
×4年3月31日 2年後の見積もり額は4,000円
(減少部分に適用すべき割引率を特定できない)
5.0%
×5年3月31日 1年後の見積もり額は4,000円 4.0%
×6年3月31日 機械を除去し、除去費用4,000円を現金で支払った。
×1年4月1日の会計処理

当社には機械を除去する法的義務がありますので資産除去債務を計上する必要があります。機械取得時点における除去費用の見積もりが3,000円、割引率が3.0%となりますので。計上する資産除去債務は以下のように算定します。

(計算過程)
資産除去債務:3,000円/(1.03)^5年=2,588円

(仕訳)
借方 金額 貸方 金額
機械 102,588 現金 100,000
資産除去債務 2,588
×2年3月31日の会計処理

決算時においては資産除去債務の増加(利息費用の計上)、及び機械の減価償却を行います(×2年3月31日時点においては将来キャッシュ・フローの見積もりに変更はありません)。

(計算過程)
利息費用:2,588円×3%=78円
減価償却費:102,588円/5年=20,518円

(仕訳)
借方 金額 貸方 金額
利息費用 78 資産除去債務 78
減価償却費 20,518 減価償却累計額 20,518
×3年3月31日の会計処理

決算時においては、まず当期1年間の資産除去債務の増加(利息費用の計上)、及び機械の減価償却を行います。また、当決算期において将来キャッシュフローの見積もりが増加していますので、増加額を変更時点における割引率を使って割引価値を算定し、これを資産除去債務の帳簿価額及び関連する有形固定資産(機械)の帳簿価額に加算します。

(計算過程)
利息費用:(2,588円+78円)×3%=80円
減価償却費:102,588円/5年=20,518円
調整額:(5,000円-3,000円)/(1.04)^3年=1,778円

(仕訳)
借方 金額 貸方 金額
利息費用 80 資産除去債務 80
減価償却費 20,518 減価償却累計額 20,518
機械 1,778 資産除去債務 1,778
×4年3月31日の会計処理

決算時においては、まず当期1年間の資産除去債務の増加(利息費用の計上)、及び機械の減価償却を行います。また、当決算期において将来キャッシュフローの見積もりが減少しています。本設例では、減少部分に適用すべき割引率を特定できないため、加重平均した割引率を使って割引価値(減少調整額)を算定し、これを資産除去債務の帳簿価額及び関連する有形固定資産(機械)の帳簿価額から減額します

(計算過程)
加重平均割引率:(当初CF3,000円/増加後CF5,000円)×3.0%+(増加分CF2,000円/増加後CF5,000円)×4.0%=3.4%
利息費用:(2,588円+78円+80円+1,778円)×3.4%=154円
減価償却費:102,588円/5年+1,778円/3年=21,110円
調整額:減少後CF4,000円/1.034^2年-(2,588円+78円+80円+1,778円+154円)=△937円

(仕訳)
借方 金額 貸方 金額
利息費用 154 資産除去債務 154
減価償却費 21,110 減価償却累計額 21,110
資産除去債務 937 機械 937
×5年3月31日の会計処理

決算時においては資産除去債務の増加(利息費用の計上)、及び機械の減価償却を行います(×5年3月31日時点においては将来キャッシュ・フローの見積もりに変更はありません)。

(計算過程)
利息費用:(2,588円+78円+80円+1,778円+154円-937円)×3.4%=127円
減価償却費:102,588円/5年+1,778円/3年-937円/2年=20,642円

(仕訳)
借方 金額 貸方 金額
利息費用 122 資産除去債務 122
減価償却費 20,642 減価償却累計額 20,642
×6年3月31日の会計処理

最終年における資産除去債務の増加(利息費用の計上)、及び機械の減価償却を行い、除去費用を実際に支払います(最終年のため、計算結果は端数調整を行っています)。

(計算過程)
利息費用:(2,588円+78円+80円+1,778円+154円-937円+127円)×3.4%=132円
減価償却費:102,588円/5年+1,778円/3年-937円/2年=20,641円

(仕訳)
借方 金額 貸方 金額
利息費用 132 資産除去債務 132
減価償却費 20,641 減価償却累計額 20,641
減価償却累計額 103,429 機械 103,429
資産除去債務 4,000 現金 4,000

(関連項目)
資産除去債務の算定(計上額の算定)と会計処理

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