複数資産にかかる資産除去債務の仕訳・会計処理

資産除去債務の対象が複数の有形固定資産から構成され、そのうち一部の資産については全体の除去以前により短い周期で除去され、再び取得される場合があります。

たとえば、資産除去債務の対象となる資産が、資産A(主たる資産)と資産Bの2つによって構成され、資産Bについては資産Aよりも短い周期で更新するものとします。

この場合には、当該資産Bについて、より短い周期での除去に係る法律上の義務及びそれに準ずるものはないものの、除去に係る法律上の義務等を有し資産除去債務の対象となる主たる資産Aがあることから、主たる資産Aの除去に伴い当該構成資産が同時に除去されるものとみて、資産Aと資産Bの有形固定資産の資産除去債務を一括して見積り、対応する除去費用を主たる資産Aの帳簿価額に加えることになります。

主たる資産の帳簿価額の増加額として資産計上された当該構成資産の除去費用は、減価償却を通じて、当該主たる資産の耐用年数にわたり各期に費用配分することになります(資産除去債務に関する会計基準の適用指針第6・7項参照)。

(具体例-資産除去債務の算定・複数の資産から構成される場合)

当社は×1年4月1日に機械Aと機械Bとを現金を支払って取得し、一体として使用を開始した。機械Aの取得原価は10,000円(耐用年数10年)であり、機械Bの取得原価は3,000円(耐用年数5年)である。
機械Aはその使用後、除去する法的義務があり、機械Bは機械Aの除去に際し同時に除去するものとする。ただし、機械Bは機械Aよりも短い周期で更新され、更新時の設備Bのみの除去についての法的義務はない。当社が機械Aを除去するときの支出額の見積もりは1,000円、機械Bを除去するときの支出額の見積もり300円であるものとする。以下の場合の仕訳を示しなさい(この問では時間価値については考慮しないものとする)。

(1) ×1年4月1日の機械Aと機械Bの取得時の仕訳
(2) ×6年3月31日の機械B更新時の仕訳(除却費用300円と新しい機械Bの購入費用3,000円は現金で支払った)
(3) x11年3月31日の機械Aと機械Bの除却費用(除却費用の支払額は当初の見積もり通りであり、現金で支払った)

(1)資産取得時(資産除去債務計上時)の仕訳

機械Aと機械Bとを一括して購入しています。また、機械Aには除去に関する法的義務があり、機械Aの除去に伴い機械Bが同時に除去されるため、機械AとBの資産除去債務を一括して見積り、対応する除去費用は機械Aの帳簿価額を増加させることになります(より短い周期で行われる機械Bの除去費用については法的義務はありませんので資産除去債務の対象とはなりません)。

(計算過程)
機械Aの除去費用の見積もり:1,000円
機械Bの除去費用の見積もり:300円
資産除去債務計上額:1,000円+300円=1,300円(除去費用は主たる資産であるAの帳簿価額に加算します)
機械Aの計上額:10,000円+1,300円=11,300円
機械Bの計上額:3,000円

(仕訳)
借方 金額 貸方 金額
機械(機械A) 11,300 現金 13,000
機械(機械B) 3,000 資産除去債務 1,300
(2)機械Bの更新時の仕訳

より短い周期で行われる機械Bの更新時の除去費用は資産除去債務の対象ではありませんので、除去時に損失計上します。

(仕訳)
借方 金額 貸方 金額
減価償却累計額 3,000 機械(機械B) 3,000
機械除却損 300 現金 3,300
機械(機械B) 3,000
(3)機械A・Bの除却時の仕訳

機械Aと機械Bとを除去します。

(仕訳)
借方 金額 貸方 金額
減価償却累計額 11,300 機械(機械A) 11,300
減価償却累計額 3,000 機械(機械B) 3,000
資産除去債務 1,300 現金 1,300

(関連項目)
資産除去債務の算定(計上額の算定)と会計処理

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