在外支店の財務諸表項目の換算(資産負債の特例・CR)

支店が海外にある場合において、在外支店の財務諸表項目がドルやユーロなどの外貨で表示されている場合、本支店合併財務諸表を作成するにあたり在外支店の財務諸表項目(決算整理後残高試算表)を外貨建てから円建てに換算する必要があります。
在外支店の財務諸表項目の換算方法については、原則として本店と同様の方法によります。ただし以下の特例を採用することも認められています(外貨建取引等会計処理基準二参照)。

(在外支店の財務諸表項目の換算-特例法)
特例1
(収益費用)
収益及び費用(収益性負債の収益化額及び費用性資産の費用化額を除く)の換算については期中平均レート(AR)により換算することができます。 収益費用の換算特例
特例2
(資産負債)
非貨幣性項目の額に重要性がない場合には、すべての貸借対照表項目(本店勘定・支店勘定は除く)についてCRにより換算することができます。またこの場合においては、損益項目についてもCRにより換算することもできます。 当ページ下記参照

非貨幣性項目の額に重要性があるかないかの判断は、非貨幣性項目を原則的な換算方法(本店と同様の方法)によって換算した結果と、換算の特例(CRによって換算)によって換算した結果との差額が当期純損益及び利益剰余金に及ぼす影響に基づいて判断することになります。またこの重要性は、換算の特例の採用を予定している全在外支店の非貨幣性項目に係る当該差額の合計額によって判断します(外貨建取引等の会計処理に関する実務指針第30項参照)。
ただし特例を使用する場合であっても、支店の『本店』勘定については、のちに本店の『支店』勘定と相殺する必要があるため、本店の『支店』勘定と同じ金額を円貨額とします。
上記のように資産・負債をCRで換算した場合においては、損益項目(収益・費用)にかんしてもCRにより円換算することができます。

(具体例-支店の財務諸表項目の換算・資産負債のCR特例)

当社のアメリカ支店のドル建て決算整理後残高試算表は以下の通りである。資料をもとに、アメリカ支店の円建ての貸借対照表及び損益計算書を作成しなさい(なお、在外支店の非貨幣性項目の額に重要性はないものと判断し、本店勘定等をのぞくすべての財務諸表項目の換算については期中平均レート(CR)を使用するものとする)。

(支店の決算整理後残高試算表・ドル建表示)
勘定科目 金額 勘定科目 金額
現金 2,000 本店 3,000
繰越商品 3,000
仕入 4,000 売上 16,000
本店仕入 10,000

(適用レート)
・期首商品棚卸高は0ドルであり、また当期の外部仕入れは一括して行われ、外部仕入時のレートは1ドル=110円(HR)あった(なお期末商品在庫はすべて外部仕入商品である)。
・売上は一括して行われ、売上時のレートは1ドル=108円(HR)であった。
・本店における支店勘定の残高は303,000円、支店売上勘定の残高は990,000円であった。
・当期の期中平均レート(AR)は105円であった。
・当期期末のレート(CR)は100円であった。

1.貸借対照表の作成

在外支店の財務諸表項目の換算手順としては、先に貸借対照表項目の換算を行います。この設問では、本店勘定や本店仕入勘定などを除くすべての財務諸表項目についてCRにより換算を行うことになりますので、外貨額の残高にCRを乗じて円貨額を算定します(本店勘定は、のちに本店の支店勘定と相殺するため、金額を一致させておくことが必要です)。

(計算過程)
現金:2,000ドル×100円=200,000円
繰越商品:3,000ドル×100円=300,000円
本店:303,000円(本店の支店勘定と同額)

(支店の貸借対照表・円建表示)
勘定科目 金額 勘定科目 金額
現金 200,000 本店 303,000
繰越商品 300,000 当期純利益 197,000

在外支店の円建て貸借対照表の貸借差額より、当期の円建ての当期純利益197,000円(=200,000円+300,000円-303,000円)が算定されます。貸借対照表より算定された円建て当期純利益はそのまま損益計算書に移し、これを損益計算書上の当期純利益とします。

2.損益計算書の作成

次に損益計算書項目の換算を行います。換算方法はすべて財務諸表項目について期末レート(CR)を適用して換算します(だだし本店仕入勘定は、のちに本店の支店売上勘定と相殺するため、金額を一致させておくことが必要です)。

(計算過程)
仕入(売上原価):4,000ドル×100円=400,000円。
売上:16,000ドル×100円=1,600,000円
本店仕入:990,000円(本店の支店売上勘定と同額)
当期純利益:197,000円(円建て貸借対照表の当期純利益と同額)

(支店の貸借対照表・円建表示)
勘定科目 金額 勘定科目 金額
売上原価 400,000 売上 1,600,000
本店仕入 990,000
為替差損益 13,000
当期純利益 197,000

在外支店の円建て損益計算書の当期純利益は、円建ての貸借対照表から移してきますので貸借対照表の当期純利益と同額です。また売上や仕入などの外貨建取引はそれぞれ期末レート(CR)等を使って換算します。この結果生じた貸借差額(上記の場合は13,000円)は為替差損益として処理します。

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