戻り商品の仕訳(割賦販売・未実現利益整理法)
割賦販売で商品を売却した場合において、顧客が割賦金の支払いができないときは売主は商品を取り戻すことができます。割賦販売商品の返品時の仕訳は、割賦販売の収益認識基準や記帳方法(対照勘定法と未実現利益整理法)との関係とで、以下のように分類されます。
記帳方法 | 処理方法 | 参照ページ |
販売基準 | 回収できなかった割賦売掛金を減額すると同時に、戻り商品の評価額と割賦売掛金の貸倒額との差額を『戻り商品損失』として損失計上します。 | 販売基準の処理 |
対照勘定法 | 対照勘定残高を取り消すと同時に、戻り商品の評価額と当該戻り商品の仕入原価との差額を『戻り商品損失』として計上します。 | 対照勘定法の処理 |
未実現利益整理法 | 回収できなかった割賦売掛金と繰延割賦売上利益とを取り消すと同時に、戻り商品の評価額と当該戻り商品の仕入原価との差額を『戻り商品損失』として計上します。 | 当ページ下記参照 |
1.販売時・決算時の仕訳(未実現利益整理法)
未実現利益整理法においては、割賦商品の引き渡し時において以下の仕訳により売上収益の計上を行います(なお、下記の解説は回収基準を前提にしております)。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
割賦売掛金 | 割賦売上 |
その後、決算時において割賦金の未回収部分に含まれている利益部分を以下の仕訳により売上総利益から控除し、翌期に負債として繰り延べます。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
繰延割賦売上利益控除 | 割賦売上利益 |
2.当期販売・当期戻りの仕訳
当期において顧客に引き渡した商品が、当期に貸倒れて手許に戻ってきた場合は、回収不能となった割賦売掛金を減額すると同時に、戻ってきた商品をその時点での評価額で『戻り商品』勘定に計上します。差額は『戻り商品損失』(販売費及び一般管理費)として記帳します。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
戻り商品 | (評価額) | 割賦売掛金 | (未回収額) |
戻り商品損失 | (差額) | - | - |
3.前期販売・当期戻りの仕訳
前期以前において顧客に引き渡した商品が、当期に貸倒れて手許に戻ってきた場合は、回収不能となった割賦売掛金を減額すると同時に、戻ってきた商品をその時の評価額で『戻り商品』勘定に計上します。さらに未実現利益整理法では、前期以前に販売した商品の割賦売掛金の未回収部分に含まれている利益が、繰延割賦売上利益(負債)として繰り越されてきているため、回収不能となった割賦売掛金に対応する繰延割賦売上利益を取り崩すことが必要となります。のこりの差額は『戻り商品損失』(販売費及び一般管理費)として記帳します。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
戻り商品 | (評価額) | 割賦売掛金 | (未回収額) |
繰延割賦売上利益 | (回収不能額分) | - | - |
戻り商品損失 | (差額) | - | - |
また、前期以前の販売分の割賦売掛金については、前期末時点において貸倒引当金が設定されている場合があります。この場合は回収不能時に貸倒引当金の取崩をおこないます。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
戻り商品 | (評価額) | 割賦売掛金 | (未回収額) |
繰延割賦売上利益 | (回収不能額分) | - | - |
貸倒引当金 | (回収不能額分) | - | - |
戻り商品損失 | (差額) | - | - |
4.決算時の仕訳
戻り商品は新たな仕入と考えて、戻り商品勘定の残高を仕入勘定に振り替えます。また、戻り商品が期末時点において再販売されずに残っている場合は、仕入勘定から繰越商品勘定へと振替を行います。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
仕入 | 戻り商品 | ||
繰越商品 | (未販売分) | 仕入 | (未販売分) |
なお上記の解説はすべて回収基準を前提にしたものとなっています。収益認識を回収期限到来基準で行う場合も基本的な記帳は変わりませんが回収期限の到来・未到来についても考慮して考える必要があります。
(具体例1-当期販売・当期戻り)
1.8,000円で仕入れた商品を10,000円で販売した。なお代金は10回の分割払いである。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
割賦売掛金 | 10,000 | 割賦売上 | 10,000 |
2.上記の割賦売掛金が第2回目の回収期限が到来する前に回収不能となり、商品を取り戻した。回収不能となった割賦売掛金の残高は9,000円、戻り商品の評価額は2,000円であった。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
戻り商品 | 2,000 | 割賦売掛金 | 9,000 |
戻り商品損失 | 7,000 | - | - |
(具体例2-前期販売・当期戻り)
1.8,000円で仕入れた商品を10,000円で販売した。なお代金は10回の分割払いである。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
割賦売掛金 | 10,000 | 割賦売上 | 10,000 |
2.一回目の割賦金(1,000円)を受取後に決算を迎えた。決算時おける割賦金の未回収額は9,000円である。
(計算過程)
当期の割賦販売の利益率:(販売価格10,000円-仕入原価8,000円)÷販売価格10,000円=0.2
割賦金の未回収部分に含まれている利益:(10,000円-1,000円)×0.2=1,800円
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
繰延割賦売上利益控除 | 1,800 | 繰延割賦売上利益 | 1,800 |
3.前期に販売した割賦売掛金のうち7,000円が回収不能となった。戻り商品の評価額は2,000円であった。
(計算過程)
回収不能部分に対応する繰延割賦売上利益は
回収不能額7,000円×前期の割賦販売利益率0.2=1,400円
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
戻り商品 | 2,000 | 割賦売掛金 | 7,000 |
繰延割賦売上利益 | 1,400 | - | - |
戻り商品損失 | 3,600 | - | - |
4.決算日を迎えた。上記3の戻り商品は決算日時点において未だに未販売である。
(計算過程)
割賦売掛金の当期回収額に対応する繰延割賦売上利益戻入れ額は
(前期末残高9,000円-回収不能額7,000円)×前期の割賦販売利益率0.2=400
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
仕入 | 2,000 | 戻り商品 | 2,000 |
繰越商品 | 2,000 | 仕入 | 2,000 |
繰延割賦売上利益 | 400 | 繰延割賦売上利益戻入 | 400 |
回収不能額7,000円に対応する繰延割賦売上利益は回収時に取り崩していますが、当期に回収した割賦売掛金2,000円に対応する繰延割賦売上利益は決算時に繰延割賦売上利益戻入勘定に振り替え売上利益に加算しています。
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