割賦販売(回収基準)・未実現利益控除法の仕訳
割賦販売とは、商品を購入者に先に引き渡し、代金は分割払いで受け取る販売形態をいいます。
割賦販売の収益認識基準には販売基準・回収期限到来基準・回収基準の3つがありますがこのページでは、容認法の一つである回収基準(未実現利益控除法)の会計処理についてご説明します。
割賦販売の収益認識基準のうち、回収基準とは、割賦金の回収の日をもって売上収益の実現の日とする基準をいいます。回収基準の会計処理には以下の2つの方法があります。
方法 | 処理方法 | 参照ページ |
未実現利益控除法 | 未実現利益控除法(未実現利益整理法)では、商品を引き渡したときはいったん全額を、
借方『割賦売掛金』・貸方『割賦売上』 とし、販売基準と同様に売上計上し、決算時において割賦金の期末残高(割賦金の未回収残高)に含まれている利益部分を未実現の利益として、売上総利益から控除し、翌期に繰り延べる処理を行います。 |
当ページ下記参照 |
対照勘定法 | 対照勘定法では、商品を引き渡したときは、売価で以下のような対照勘定を使い、備忘記録のみを行います。
借方『割賦売掛金』・貸方『割賦仮売上』 以後、割賦金を回収するごとに、上記の対照勘定の反対仕訳を行うと同時に『割賦売上』を計上し、収益計上を行います。 |
対照勘定法の会計処理 |
未実現利益控除法では、商品等を引き渡した段階でいったんその全額を売上計上します(引渡し時の記帳は販売基準と同様です)。
いっぽう、期末に未回収の割賦金に含まれている利益相当額については、以下の仕訳によりこれを売上総利益から控除し、翌期に負債として繰り延べます。
借方『繰延割賦売上利益控除』・貸方『繰延割賦売上利益』
上記の『繰延割賦売上利益控除』は割賦金の未回収残高に含まれている利益部分を売上総利益から控除する項目です。表示は損益計算書の売上総利益の控除項目として表示されることになります。
いっぽう、『繰延割賦売上利益』は翌期に繰り越される利益を表し、表示は貸借対照表の流動負債の部に計上されます。
翌期に繰り越された繰延割賦売上利益のうち、翌期に回収された割賦売掛金に対応する利益相当額は、翌期の決算期に以下の仕訳で戻入処理を行います。
借方『繰延割賦売上利益』・貸方『繰延割賦売上利益戻入』
なお、参考書や受験学校によっては未実現利益控除法は未実現利益整理法と表現することもありますので、該当の参考書等で学習されておられる方は読み替えて当ページをご参照ください。
(具体例-回収基準・未実現利益控除法)
1.8,000円で仕入れた商品を10,000円で販売した。なお代金は10回の分割払いである。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
割賦売掛金 | 10,000 | 割賦売上 | 10,000 |
2.第1回目の回収期限が到来し、現金1,000円を回収した。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
現金 | 1,000 | 割賦売掛金 | 1,000 |
3.決算日となった。当期に回収期限が到来した割賦金は3回分(3,000円分)であり、全額期限内に入金している。
(計算過程)
当期の割賦販売の利益率:(販売価格10,000円-仕入原価8,000円)÷販売価格10,000円=0.2
割賦金の未回収部分に含まれている利益:(10,000円-3,000円)×0.2=1,400円
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
繰延割賦売上利益控除 | 1,400 | 繰延割賦売上利益 | 1,400 |
回収基準において収益認識されるのは、割賦金の回収額となりますので、未回収部分の収益は翌期以降に繰り越すことが必要です。未回収部分に含まれる利益は割賦金の未回収残高(上記の例では7,000円)に割賦販売利益率(0.2)を乗じて算定します。
なお、繰延割賦売上利益控除は損益計算書上、売上総利益から控除する形で記載します。
上記の仕訳によって翌期に繰り越された繰延割賦売上利益のうち、翌期に回収された割賦売掛金に含まれる利益相当額は、翌期の決算期に下記仕訳により戻入処理を行います(下記仕訳では、翌期にすべての割賦売掛金を回収したものとしています)。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
繰延割賦売上利益 | 1,400 | 繰延割賦売上利益戻入 | 1,400 |
繰延割賦売上利益戻入は損益計算書上、売上総利益に加算する形で記載します。
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