棚卸資産の評価損(商品評価損)に係る税効果会計の仕訳

法人税法において、棚卸資産の評価損(商品評価損)の計上は、資産が災害により著しく損傷した場合等や低価法を事前に届け出ている場合など、損金計上できる場合が限定されています(法人税法第33条第2項、法人税法施行令第68条第1項1号等参照)。

会計上において計上された棚卸資産の評価損(商品評価損)が税務上において損金不算入となった場合、会計と税務との間で差異が生じることから一時差異(将来減算一時差異)として税効果会計を適用することが必要となります。

商品評価損の損金不算入額に対し税効果会計の適用した時は、損金不算入額に法定実効税率を乗じた金額を、借方『繰延税金資産』・貸方『法人税等調整額』として処理し、商品を販売または廃棄するなどにより差異が解消した年度においては設定時の逆仕訳を行うことになります。

(仕訳・税効果計上時)
商品評価損に関する繰延税金資産計上額=評価損計上額(損金不算入額)×法定実効税率

なお商品評価損の損金不算入額は、計上時において課税所得が損金不算入によって増額しますが、その分差異解消時の課税所得が減額(将来減算一時差異)しますので法人税を前払していると考えて『繰延税金資産』を計上します。繰延税金資産と繰延税金負債の計上を誤らないようにご注意ください。

(具体例-商品評価損に対する税効果会計の適用)

1.×1年決算時において、棚卸資産(商品)の評価損3,000円を計上したが法人税法上はその全額が損金不算入とされた(有税処理)。当該商品評価損に関する税効果会計適用時の仕訳を示しなさい。なお法定実効税率は40%として算定すること(以下同様)。

(計算過程)
繰延税金資産計上額:3,000円×40%=4,000円

(仕訳・税効果計上時)
借方 金額 貸方 金額
繰延税金資産 1,200 法人税等徴税額 1,200

2.×2年度において上記の商品がすべて販売された。販売された商品評価損の税効果会計に関する仕訳を示しなさい。

(仕訳・税効果解消時)
借方 金額 貸方 金額
法人税等調整額 1,200 繰延税金資産 1,200

×1年度において計上された商品評価損が損金不算入となっています。これは計上年度においては課税所得計算上加算されますが、その分が販売や廃棄された年度において減算されますので将来減算一時差異となります。将来の課税所得(法人税額)を減額する効果を持つ将来減算一時差異については、法人税の前払と考えて繰延税金資産を計上することになります。

なお設例にある「有税処理」とは、会計上の費用が課税所得算定上は費用(損金)とならないため、申告書において加算調整を行うこと(税金を多く払うこと)を前提に経費処理することをいいます。

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