受託買付の仕訳・会計処理

他者の依頼を受けて、他者のかわりに商品を購入することを受託買付といいます。受託買付においては、商品の購入を依頼する側を委託者、商品の購入を依頼される側を受託者といいます。
受託買付において、受託者側の会計処理は、委託者との債権債務を処理するために『受託買付』勘定を使用する方法と、使用しない方法とがあります(なお、委託者側の会計処理は委託買付の仕訳・会計処理をご参照ください)。

(受託買付・決算時の処理)
分類 処理方法
受託買付勘定を使用する方法 受託者が委託者から買付代金を預かった時や、後に商品代金や立替経費の決済を受けた時は『受託買付』勘定の貸方、商品を委託者の代わりに購入した時や経費を建て替えた時は『委託買付』勘定の借方に記帳します。なお、受取った手数料に関しては『受取手数料』勘定を使って記帳し、受託者の収益として計上します。
受託買付勘定を使用しない方法 受託買付勘定は使用しません。受託者は商品購入の代行をするだけですので、受託者が委託者から買付代金を預かった時は『預り金』勘定の増加、後に商品代金や立替経費の決済を受けた時は『立替金』勘定の減少、商品を委託者の代わりに購入した時や経費を建て替えた時は『預り金』勘定の減少または『立替金』勘定の増加として記帳します。受取った手数料に関しては受託買付勘定を使用する場合と同様、『受取手数料』勘定を使って記帳し、受託者の収益として計上します(なお収益計上時の相手勘定は『未収金』とします)。

受託買付はあくまでも委託者の商品購入の代行を行っているだけです。したがって、受託者は商品を購入しても仕入計上は行いません。したがって、購入代金は委託者に対する債権ととらえて記帳することになります。委託者との債権債務は『受託買付』勘定、または『立替金』勘定などで記帳しますが、受託者の受け取る手数料は『受取手数料』勘定で記帳し、収益として認識します。
なお、『受託買付』勘定を使用している場合であっても貸借対照表上は立替金・未収金(受託買付勘定の借方残高)または預り金(受託買付勘定の貸方残高)として記帳しますので上記のいずれの方法をとっても決算書の表示は変わりません。

(具体例1-受託買付・受託買付勘定を使用する場合)

1.A社(委託者)はB社(受託者)に商品の購入を依頼し、前金として現金10,000円を支払った。受託者B社の仕訳を示しなさい。なおB社では受託買付の債権債務の処理については受託買付勘定を使用し記帳している(以下同様)。

(仕訳・前金受取時)
借方 金額 貸方 金額
現金 10,000 受託買付 10,000

2.B社はA社から依頼された商品30,000円を購入し代金は現金で支払った。

(仕訳・商品購入時)
借方 金額 貸方 金額
受託買付 30,000 現金 30,000

3.B社は委託者であるA社へ以下の買付計算書と商品を送付した。また運送経費1,000円を現金で支払った。

(買付計算書)
仕入:30,000円

買付手数料:3,000円
立替経費:1,000円
前受金:△10,000円

請求金額:24,000円

(仕訳・買付計算書送付時)
借方 金額 貸方 金額
受託買付 4,000 受取手数料 3,000
現金 1,000

4.委託者A社から請求金24,000円を現金でうけとった。

(仕訳・代金決済時)
借方 金額 貸方 金額
現金 24,000 受託買付 24,000
(具体例2-受託買付・受託買付勘定を使用しない場合)

1.A社(委託者)はB社(受託者)に商品の購入を依頼し、前金として現金10,000円を支払った。受託者B社の仕訳を示しなさい。なおB社では受託買付の債権債務の処理については受託買付勘定は使用していない(以下同様)。

(仕訳・前金受取時)
借方 金額 貸方 金額
現金 10,000 預り金 10,000

2.B社はA社から依頼された商品30,000円を購入し代金は現金で支払った。

(仕訳・商品購入時)
借方 金額 貸方 金額
預り金 10,000 現金 30,000
立替金 20,000

3.B社は委託者であるA社へ以下の買付計算書と商品を送付した。また運送経費1,000円を現金で支払った。

(買付計算書)
仕入:30,000円

買付手数料:3,000円
立替経費:1,000円
前受金:△10,000円

請求金額:24,000円

(仕訳・買付計算書送付時)
借方 金額 貸方 金額
未収金 3,000 受取手数料 3,000
立替金 1,000 現金 1,000

4.委託者A社から請求金24,000円を現金でうけとった。

(仕訳・代金決済時)
借方 金額 貸方 金額
現金 24,000 立替金 21,000
未収金 3,000

なお『受託買付』勘定を使用しない場合において、『受取手数料』勘定の相手勘定は『立替金』勘定ではなく『未収金』勘定として記帳します。

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