小口現金と定額資金前渡制度(インプレストシステム)の会計処理
小口現金とは、事務用品購入費や社員の交通費の精算など、日常の少額な支払に備えて営業部や総務部・経理部などの各部署で保有する少額の現金をいいます。
小口現金の支給を受けた時、支出した時は『小口現金』勘定を使って記帳します。
小口現金の各部署への補給は、以下のように定額資金前渡制度(インプレスト・システム)と随時補給制度とがあります。
補給方法 | 内容 | 参照ページ |
定額資金前渡制度 (インプレスト・システム) |
一定期間ごとに、その期間の使用分の小口現金を補給する制度です。使用分を補給するため、補給直後の小口現金残高は常に一定額となります。 | このページの下部参照 |
随時補給制度 | 必要に応じ、随時に小口現金を補給する制度です。 | 随時補給制度 |
定額資金前渡制度(インプレスト・システム)によれば、経理担当者は各部署から1週間や1か月などの一定期間経過後に、小口現金の使用用途及び使用額について各部署から報告を受け、使用額と同額を各部署に支給します。定額資金前渡制度における各時点の会計処理のポイントは以下の通りです。
各段階 | 会計処理 |
現金支給時 | 支給された現金は『小口現金』勘定の借方に記帳し、他の現金預金とは区分して記帳します。 |
小口現金使用時 | 各部署に支給された小口現金が使用された時は、各部署において使用用途の記録を行います。ただし、仕訳記帳は一定期間経過後にまとめて行いますのでこの段階での仕訳は必要ありません。 |
支払報告時 | 一定期間が経過した段階で、各部署の小口現金担当者は経理担当者(経理部など)にその期間の小口現金の使用用途と使用額の報告を行います。支払報告を基に経理担当者は経費計上などの仕訳を行い、『小口現金』勘定を減少させます。その後、使用額と同額を再び各部署に支給します。 |
(具体例1-インプレストシステム・現金支給時)
当社は本日より小口現金の支給に関し定額資金前渡制度(インプレスト・システム)を採用することとした。毎月月末に各部署から支払報告を受け、各月の使用額と同額の小口現金を小切手にて補給するものとした。インプレストシステムの採用日において、各部署の小口現金担当者に対し、総額で30,000円の小切手を振出して支給した。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
小口現金 | 30,000 | 当座預金 | 30,000 |
(具体例2-インプレストシステム・小口現金使用時)
営業部において、事務用品購入に際し3,000円を小口現金より支出した。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
仕訳なし | - | - | - |
小口現金に関する仕訳記帳は、支払報告時にまとめて行いますので、各部署において小口現金を使用した段階では仕訳記帳は必要ありません(各部署における使用用途の記録は、後日の小口現金支払報告のために行っておく必要はあります)。
(具体例3-インプレストシステム・支払報告時)
月末において、各部署から経理部へ下記の通り支払報告を受けた(本具体例では、各部署からの報告額を合算したものを記載しています)。
(支払報告)
事務用品費:3,000円
旅費交通費:4,000円
水道光熱費:3,000円
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
事務用消耗品費 | 3,000 | 小口現金 | 10,000 |
旅費交通費 | 4,000 | - | - |
水道光熱費 | 3,000 | - | - |
(具体例4-インプレストシステム・現金補給時)
上記の小口現金使用額10,000円について、同日に小切手を振り出して各部門の小口現金として支給した。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
小口現金 | 10,000 | 当座預金 | 10,000 |
なお、上記設例のように支払報告と同時に小口現金の支給を行う場合は報告時の仕訳と支給時の仕訳をまとめて下記の通り仕訳することも可能です。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
事務用消耗品費 | 3,000 | 当座預金 | 10,000 |
旅費交通費 | 4,000 | - | - |
水道光熱費 | 3,000 | - | - |
スポンサードリンク