ストックオプション数を変動させる条件変更に係る会計処理

権利確定日までの期間において費用化されるストックオプションの公正な評価額は、公正な評価単価にストックオプション数を乗じて算定します。
この時、ストックオプション数については付与されたストックオプション数(付与数)から、権利不確定による失効の見積数を控除して算定しますがストックオプション数に変動が生じた場合の会計処理は以下のようになります(企業会計基準第8号 ストック・オプション等に関する会計基準(以下、ストックオプション会計基準)第7項(1)(2)・第11項参照)。

(ストックオプション数の変更)
変更事由 会計処理
権利不確定による失効の見積数に重要な変動が生じた場合 これによりストックオプション数を見直した場合には、見直し後のストックオプション数に基づくストックオプションの公正な評価額に基づき、その期までに費用として計上すべき額と、これまでに計上した額との差額を見直した期の損益として計上します(詳細はストックオプションの付与時・権利確定日前の会計処理をご参照ください。
権利確定条件を変更する等の条件変更により、ストックオプション数を変動させた場合 条件変更前から行われてきた費用計上を継続して行うことに加え、条件変更によるストックオプション数の変動に見合う、ストックオプションの公正な評価額の変動額を、以後、合理的な方法に基づき、残存期間にわたって計上します(このページの下記具体例を参照)。
(具体例-ストックオプション数の変動)

3月決算法人である当社は、x1年4月1日に以下の条件でストックオプションを付与した。x2年3月31日、×3年3月31日および×4年3月31日の仕訳を示しなさい(×3年決算期以降の追加条件も参照の事)。

(ストックオプションの条件)
・役員及び従業員30人に対し、1人当たり10個(合計300個)のストックオプションを付与
・ストックオプション1個当たり10株の交付が受けられる。
・権利行使価格は1株当たり100円
・ストックオプションの公正な評価単価は1個あたり50円
権利確定のための勤務条件:継続して×4年9月30日まで勤務すること
権利確定のための利益条件:行使直前の期間の利益が×1年3月期の利益と比べ110%以上であること
・利益条件の達成見込みは×4年3月期である
・権利確定日までの失効見込は0とする

(計算過程-×2年3月期)
勤務条件の達成見込と利益条件の達成見込とでは、勤務条件の達成見込の方が後になるため、勤務条件の達成見込である×4年9月30日までの期間である42月で費用を按分します。

ストックオプションの公正な評価額:50円×10個×30人=15,000円
×2年3月期の費用計上額:15,000円×12月/42月=4,286円

(仕訳・×2年3月31日)
借方 金額 貸方 金額
株式報酬費用 4,286 新株予約権 4,286

追加条件1:×3年3月期において、利益条件の達成可能性はないと見込まれた。

(計算過程-×3年3月期)
利益条件の達成見込がないため、過年度に計上した費用計上額(新株予約権)を戻し入れる処理を行います。

(仕訳・×3年3月31日)
借方 金額 貸方 金額
新株予約権 4,286 株式報酬費用 4,286

追加条件2:権利確定条件の達成の可能性はないと見込まれたため、当該ストックオプションは、インセンティブ効果が失われたと考えられた。そこで、取締役及び従業員のインセンティブを高めるために、X3年6月の株主総会において、権利確定条件を直前会計期間の利益が×1年3月期と比べ105%以上であることに変更した。権利確定条件変更時点において条件変更後の利益条件の達成見込みは X4年3月期である(実際に×4年3月期時点において達成した)。

(計算過程-×4年3月期)
この条件のもとでも勤務条件の達成時期の方が利益条件の達成時期より遅いと見込まれるので、勤務条件をもとに費用配分することになります。勤務期間は条件変更後の×3年7月から×4年9月までの15月、そのうち×4年3月期は9月であるため

ストックオプションの公正な評価額:50円×10個×30人=15,000円
×2年3月期の費用計上額:15,000円×9月/15月=9,000円

(仕訳・×4年3月31日)
借方 金額 貸方 金額
株式報酬費用 9,000 新株予約権 9,000

権利確定条件を変動させたことにより、ストックオプション数(達成見込分)が×3年3月末時点の0個から×3年7月以降に300個に増加しています。この増加分について、変更以降において合理的な方法に基づき、費用配分します。

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