ストックオプションの付与時・権利確定日前の会計処理

ストックオプションとは、会社が役員や従業員に対し、あらかじめ定められた一定の価格で自社の株式を取得できる権利(新株予約権)を与える制度をいいます。
ストックオプションは役員や従業員の業績に応じた労働の対価としての性格を有するものであり、会計上は給与の一形態として費用計上することになります。
ストックオプションでは、業績や勤務状況など一定の条件を満たすことが権利行使のための条件となっている場合が多く、この条件を満たす日を権利確定日といいます。権利行使は権利確定日以降おこなうことができます。
ストックオプションの会計処理のポイントは、権利確定日の前後において以下のとおりです(企業会計基準第8号 ストック・オプション等に関する会計基準(以下、ストックオプション会計基準)第4項以下参照)。

(ストックオプションの会計処理)
内容 参照ページ
権利確定日前 ストックオプションの公正な評価額を権利付与日から権利確定日までの対象勤務期間において期間按分します。期間按分された金額は、各期の費用として『株式報酬費用』勘定で処理し、相手勘定は『新株予約権』(純資産)として処理します。 このページの下部参照
権利確定日 権利確定日においては、ストック・オプション数を権利の確定したストック・オプション数と一致させます。これによりストック・オプション数を修正した場合には、修正後のストック・オプション数に基づくストック・オプションの公正な評価額に基づき、権利確定日までに費用として計上すべき額と、これまでに計上した額との差額を権利確定日の属する期の損益として計上します。 権利確定日の会計処理
権利確定日後 権利行使がなされた時は、権利行使分に対応する新株予約権を資本金等に振り替えます。権利行使がなされなかった部分に対応する新株予約権については、失効が確定した期の利益として計上します。 権利確定日後の会計処理

ストックオプションの権利確定日前までの期間においては、ストックオプションの公正な評価額を権利付与日から権利確定日までの対象勤務期間において期間按分します。期間按分された金額は、各期の費用として『株式報酬費用』勘定で処理し、相手勘定は『新株予約権』(純資産)として処理します。
ストックオプションの公正な評価額および、各期の費用按分額は以下の通りとなります。

(各期の費用計上額の算定)
A:ストックオプションの公正な評価額=公正な評価単価×ストックオプション数

B:当期末までの累計費用=A×付与日から当期末までの期間/付与日から権利確定日までの期間

C:当期の費用計上額=B-前期末までの費用計上額の累計

ストックオプションの公正な評価単価は株式オプション価格算定モデル等の算定技法(二項モデルやブラックショールズモデルなど)を利用して公正な評価単価を見積ることになります(会計士試験など受験簿記においては数値は与えられます。ストックオプション会計基準第6項参照)。
ストックオプション数は付与されたストック・オプション数の合計値から、権利不確定による失効の見積数を控除して算定します。付与日から権利確定日の直前までの間に、権利不確定による失効の見積数に重要な変動が生じた場合には、これに応じてストック・オプション数を見直します。ストック・オプション数を見直した場合には、見直し後のストック・オプション数に基づくストック・オプションの公正な評価額に基づき、その期までに費用として計上すべき額と、これまでに計上した額との差額を見直した期の損益として計上します(ストックオプション会計基準第7項参照)。

(具体例-ストックオプション・権利確定日前)

3月決算法人である当社は、x1年7月1日に以下の条件でストックオプションを付与した。x2年3月31日および×3年3月31日の仕訳を示しなさい。

(ストックオプションの条件)
・役員及び従業員30人に対し、1人当たり10個(合計300個)のストックオプションを付与
・ストックオプション1個当たり10株の交付が受けられる。
・権利行使価額は1株当たり100円
・ストックオプションの公正な評価単価は1個あたり50円
・権利確定日は×3年6月30日
・権利確定日までの失効見込(退職者見込数は当初0人であったが、×3年3月末時点において2人に修正する)

(計算過程)

ストックオプションの付与日から権利確定日までは2年(24月)であり、このうち×2年3月期の占める割合は9月分であるため、×2年3月期におけるストックオプションの費用計上額は以下の通りとなります。

ストックオプションの公正な評価額:50円×10個×30人=15,000円
×2年3月期の費用計上額:15,000円×9月/24月=5,625円

(仕訳・×2年3月31日)
借方 金額 貸方 金額
株式報酬費用 5,625 新株予約権 5,625

×3年3月期において、退職者2人によるストックオプション失効見込が20個分発生します。×3年3月期の費用計上額は失効見込を考慮した280個(=10個×28人)分のストックオプションを基に算定し、前年までの費用計上額を控除することにより算定されます。

(計算過程)

ストックオプションの公正な評価額:50円×10個×28人=14,000円
×3年3月期までの累計費用計上額:14,000円×21月/24月=12,250円
×3年3月期の期間費用計上額:12,250円-5,625円=6,625円

(仕訳・×3年3月31日)
借方 金額 貸方 金額
株式報酬費用 6,625 新株予約権 6,625

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