公的年金等に係る雑所得・公的年金等控除額の計算

1.公的年金とは

公的年金による収入は、所得税法上は雑所得に区分されますが、その他の雑所得とは異なり税額計算上において特別な控除(公的年金等控除額)が認められます。
なお、このような特別な控除が認められる公的年金とは以下のようなものをいいます(所得税法第35条第2項・第3項参照)

(公的年金等の種類)
1.国民年金法、厚生年金保険法、公務員等の共済組合法などの規定による年金
2.恩給(一時恩給のぞく)及び過去の勤務に基づき使用者であつた者から支給される年金
3.確定給付企業年金契約に基づいて支給される年金

生命保険契約による年金などは公的年金には含まれません(公的年金以外の雑所得となります)。
なお、遺族年金・障害年金は非課税所得となりますので所得税は発生しません(所得税法第9条第1項3号参照)

2.公的年金等に係る雑所得の計算と公的年金等控除額

公的年金等に係る雑所得はその年中の公的年金等の収入金額から公的年金等控除額を控除した残額となります(所得税法第35条第2項第1号参照)

(公的年金等に係る雑所得の計算式)
公的年金等に係る雑所得=年金収入-公的年金等控除額

公的年金等控除額は年金受給者の年齢(65歳以上かそれ未満か)、および年金収入により以下のようになります(所得税法第35条第4項、租税特別措置法第41条の15の3参照)

(公的年金等控除額・65歳以上)
年金収入 公的年金等控除額
330万円以下 1,200,000円
330万円超 410万円以下 収入金額×25%+375,000円
410万円超 770万円以下 収入金額×15%+785,000円
770万円超 収入金額×5%+1,555,000円
(公的年金等控除額・65歳未満)
年金収入 公的年金等控除額
130万円以下 700,000円
130万円超 410万円以下 収入金額×25%+375,000円
410万円超 770万円以下 収入金額×15%+785,000円
770万円超 収入金額×5%+1,555,000円

仮に、年齢70歳、公的年金収入500万円の場合、公的年金等控除額及び公的年金等に係る雑所得は以下の通りになります。

(計算例)
公的年金等控除額:5,000,000円×15%+785,000円=1,535,000円
公的年金等に係る雑所得:5,000,000円-1,535,000円=3,465,000円

公的年金以外の収入(給与・不動産・事業所得など)があれば、これらを合算し、基礎控除などの各種所得控除額を差し引いて課税所得を算定し、これに超過累進税率を乗じることによって所得税額を算定します。

3.公的年金等に係る確定申告不要制度

公的年金等による収入がある場合において、以下の2つの条件の両方に当てはまる場合、その年の確定申告は不要となります(所得税法第121条第3項参照)。

(公的年金等に係る確定申告不要制度の条件)
1.公的年金等の収入金額が400万円以下であること
2.公的年金等に係る雑所得以外の所得金額20万円以下であること

ただし、上記の要件に当てはまる場合においても確定申告することは可能です。社会保険や生命保険または医療費などの支出が多かった場合、確定申告をすることにより源泉徴収されている所得税額の一部が還付される事もありますのでご注意ください。

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