退職金に係る税金の計算(退職所得の計算等)

1.退職所得に係る所得税額の計算

所得税法上において退職所得とは、退職手当、一時恩給その他の退職により一時に受ける給与及びこれらの性質を有する給与をいいます(所得税法第30条第1項参照)。したがって退職年金など年金形式で支払われるものに関してはここでいう退職所得には当てはまりません(税務上は雑所得扱いになります)。

退職所得は退職後の生活を支えるものであり、税法上は優遇的な措置が取られています。退職所得の計算は以下の通りです。
(なお退職時に会社に退職所得の受給に関する申告書を提出している場合、正しい税額が源泉徴収されていますので、退職金に関して確定申告の必要はありません)。

(退職所得の金額)
退職所得の金額=(退職金等の収入金額-退職所得控除額)×1/2※

※勤続年数が5年以下の役員等の場合、その役員等勤続年数に対応する金額については1/2を乗じません(所得税法第30条第2項・第4項参照)。

上記算式の退職所得控除額は以下の算式によって求めます。

(退職所得控除)
勤続年数 退職所得控除額
20年以下 40万円×勤続年数(最低80万円)
20年超 800万円+70万円×(勤続年数-20年)

上記算式の勤続年数について、1年未満の端数は切り上げます(例:1年10か月→2年)
また障害者になったことに直接基因して退職したと認められる場合は上記金額に100万円が加算されます。
なお、退職所得係る税金は分離課税方式により算定されますので、他の所得とは区分し、上記の退職所得の金額に超過累進税率を乗じて計算します。

(計算例1)
勤続年数15年5か月、退職一時金600万円の場合

勤続年数:15年5か月→16年(1年未満切上)
退職所得控除額:40万円×16年=640万円
退職所得:(600万円-640万円)×1/2=0円(退職所得ゼロのため納税額なし)

(計算例2)
勤続年数15年5か月、退職一時金900万円の場合

勤続年数:15年5か月→16年(1年未満切上)
退職所得控除額:40万円×16年=640万円
退職所得:(900万円-640万円)×1/2=130万円
所得税額:130万円×5%=6.5万円

(計算例3)
勤続年数25年5か月、退職一時金2,000万円の場合

勤続年数:25年5か月→26年(1年未満切上)
退職所得控除額:800万円+70万円×(26年-20年)=1,220万円
退職所得:(2,000万円-1,220万円)×1/2=390万円
所得税額:390万円×20%-42.75万円=35.25 万円

なお、平成25年より復興特別消費税として所得税額(基準所得税額)に2.1%を掛けて計算した額を合わせて納付することが必要です。
計算例3の場合、35.25万円+35.25万円×2.1%=35万9902円(所得税及び復興特別所得税)となります。
このほかに住民税として、退職所得×10%が徴収されます(計算例3の場合、39万円)

2.退職所得の受給に関する申告書

退職する際に、会社に「退職所得の受給に関する申告書」を提出している場合、退職時に上記の計算式で算定された正しい税額が源泉徴収されるため、翌年に改めて確定申告する必要はありませんが、「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない場合、退職金の収入金額から一律20.42%の所得税及び復興特別所得税が源泉徴収されますので、確定申告で精算することが必要となります(一般的に退職金の納税額は低く抑えられているため、多くのケースにおいて確定申告することにより還付を受けることができます)。

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