時価ヘッジ(ヘッジ会計)の仕訳・会計処理

ヘッジ会計とは、ヘッジ取引のうち一定の要件を充たすものについて、ヘッジ対象に係る損益とヘッジ手段に係る損益を同一の会計期間に認識し、ヘッジの効果を会計に反映させるための特殊な会計処理をいいます(金融商品会計に関する会計基準29項参照。なお、ヘッジ取引やヘッジ会計などの用語説明や要件などはヘッジ取引とヘッジ会計をご参照ください)。

ヘッジ取引において、ヘッジ手段となるデリバティブ取引は原則として時価評価となります(金融商品に関する会計基準25項参照)。一方、ヘッジ対象についても時価評価の対象となってるのであれば特殊な会計処理は必要ないことになります。したがってヘッジ会計が問題となるのはヘッジ対象が時価評価の対象となっていない場合における損益の認識時点のズレの調整についてということになります。この調整法としてヘッジ会計には、以下のように繰延ヘッジと時価ヘッジの2つの方法があります。

(繰延ヘッジと時価ヘッジ)
名称 内容 参照
繰延ヘッジ 時価評価されているヘッジ手段に係る損益又は評価差額を、ヘッジ対象に係る損益が認識されるまで純資産の部において繰り延べる方法です。 繰延ヘッジの仕訳・会計処理
時価ヘッジ ヘッジ対象である資産又は負債に係る相場変動等を損益に反映させることにより、その損益とヘッジ手段に係る損益とを同一の会計期間に認識する方法です。 当ページ下記参照

上記の方法のうち、繰延ヘッジが原則的方法となります(金融商品会計に関する会計基準32項参照)。また、時価ヘッジは時価評価差額が損益に反映されていないその他有価証券をヘッジ対象とする場合などに適用されます。

(具体例-時価ヘッジ)

1.x1年12月1日において、国債10口を1口94円(その他有価証券で処理)で購入し、購入代金は現金で支払った。また国債の価格変動リスクをヘッジする目的で国債先物10口を1口95円で売り建て、委託証拠金として50円を現金で支払った。なお、その他有価証券の評価は全部純資産直入法によって処理し、税効果会計は適用しない。当取引はヘッジ会計の要件を満たすため時価ヘッジの方法によりヘッジ会計を適用する。当社の決算日は毎年3月31日である。

(契約時)
借方 金額 貸方 金額
投資有価証券 940 現金 940
先物取引差入保証金 50 現金 50

2.x2年3月31日に決算日を迎えた。なお決算日時点における債券の時価は92円、国債先物の時価は1口93円であった。

(計算過程)
その他有価証券評価差額金:(92円-94円)×10口=-20円
先物損益:(95円-93円)×10口=20円

(決算時)
借方 金額 貸方 金額
投資有価証券評価損 20 投資有価証券 20
債券先物 20 先物損益 20

3.x2年4月1日において、期首振替仕訳を行った。

(期首時)
借方 金額 貸方 金額
投資有価証券 20 投資有価証券評価損 20
先物損益 20 債券先物 20

4.x2年4月30日において、国債を1口91円で全て売却し代金は現金で受け取った。また、国債先物を1口92円で反対売買による差金決済を行い、代金は委託証拠金の返還と一緒に現金で受け取った。

(計算過程)

有価証券売却損益:(91円-94円)×10口=-30円
先物損益:(95円-92円)×10口=30円

(売却時)
借方 金額 貸方 金額
現金 910 投資有価証券 940
投資有価証券売却損益 30
現金 30 先物損益 30
現金 50 先物取引差入保証金 50

その他有価証券の評価差額の処理方法として全部純資産直入法を採用していますので、ヘッジ対象であるその他有価証券(投資有価証券)の期末時における時価評価差額は本来であれば損益に反映されません。ただし、本設例ではヘッジ会計を適用し、その方法として時価ヘッジを採用しているため、ヘッジ対象に係る時価評価差額をヘッジ手段(デリバティブ)に係る評価差額と同じ期間、すなわち毎決算期ごとに損益認識することになります。
したがって、その他有価証券の時価評価差額については純資産の部に直接計上せず、『投資有価証券評価損益』勘定を使って損益計算に反映させています。
(なお、債券先物に関する詳細な仕訳は債券先物取引の仕訳・会計処理をご参照ください)。

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