一取引基準と二取引基準の仕訳・会計処理

外貨建取引について、売掛金や買掛金などの外貨建債権債務の代金決済に伴って発生した損益の処理に関しては、下記の通り一取引基準と二取引基準という2つの考え方があります。

(一取引基準と二取引基準)
一取引基準 外貨建取引と代金決済取引とを連続した一つの取引として考える方法です。この方法では代金が決済されるまで売上・仕入や在庫などの金額は未確定となり、取引発生時のレートと代金決済時のレートの差額から生じる損益については売上や仕入を調整することになります。
二取引基準 外貨建取引と代金決済取引とは別々の独立した取引であると考える方法です。この方法では売上高や仕入高は輸出入の時点で確定され、その後のレート変動による損益は、売上や仕入とは別の為替差損益として損益認識することになります。

一取引基準では、代金が決済されるまで売上や仕入の取引額が確定せず、また在庫や資産の取得価額が確定しないことによる配賦計算・償却計算の複雑化など実務上のおおくの問題点有することとなるため、現行の制度会計においては二取引基準の考え方に沿った処理が採用されています(外貨建取引等会計処理基準一・3参照)

(具体例1-一取引基準)

1.アメリカの仕入先A社より商品100ドル分を仕入れ、代金は掛けとした。なお、取引発生時の為替レートは1ドル=100円であった。

(計算過程)
100ドル:100×100円=10,000円

(仕訳・仕入時)
借方 金額 貸方 金額
仕入 10,000 買掛金 10,000

2.上記の買掛金を現金で決済した。なお、代金決済時のレートは1ドル=105円であった。

(計算過程)
100ドル:100×105円=10,500円
決済損益:10,000円-10,500円=-500円

(仕訳・決済時)
借方 金額 貸方 金額
買掛金 10,000 現金 10,500
仕入 500

一取引基準では、取引発生時のレートと代金決済時のレートとの差額によって生じる決済損益は、仕入や売上の追加的な調整と認識することになります。この方法では仕入・売上や在庫金額は代金が決済されるまで確定されず、また在庫金額が確定しないことによる追加的な配賦計算の必要性が生じるなど実務上多くの問題点を含むことになります。

(具体例2-二取引基準)

1.アメリカの仕入先A社より商品100ドル分を仕入れ、代金は掛けとした。なお、取引発生時の為替レートは1ドル=100円であった。

(計算過程)
100ドル:100×100円=10,000円

(仕訳・仕入時)
借方 金額 貸方 金額
仕入 10,000 買掛金 10,000

2.上記の買掛金を現金で決済した。なお、代金決済時のレートは1ドル=105円であった。

(計算過程)
100ドル:100×105円=10,500円
決済損益:10,000円-10,500円=-500円

(仕訳・決済時)
借方 金額 貸方 金額
買掛金 10,000 現金 10,500
為替差損益 500

二取引基準においては、取引価格はすでに取引発生時のレートで確定しており、その後のレート変動による損益は別個の取引ととらえます。よって、決済時のレートによって当初取引価格が後日変動することはありません。

(関連項目)
外貨建取引(売上・仕入などの商品売買)の仕訳
HR・CR・AR(外貨建取引・資産・負債の換算レート)について

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