外貨建取引(前払金・前渡金・前受金など)の仕訳
外貨建取引とは、売買価額その他の取引価額などが外国通貨(ドルやユーロなど)で表示されている取引をいいます。
外貨建取引を記帳する場合は、外貨で表示されている取引価額を円貨に換算することが必要となりますが、外貨建取引の換算に関しては原則として取引発生時のレート(HR)を使って外貨から円貨への換算を行います。
商品売買などに先立って、前払金(前渡金)を支払ったり、前受金を受け取ったりすることがありますが、外貨建て取引においては前払金・前受金についても取引発生時のレート(HR)を使用して外貨から円貨への換算を行います。
(具体例1-外貨建取引・前払金)
1.アメリカの仕入先A社より商品30ドル分を輸入するにあたり、前払金として10ドルを現金で支払った。なお、前払金支払時の為替レートは1ドル=100円であった。
(計算過程)
前払金10ドル:10×100円=1,000円
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
前払金 | 1,000 | 現金 | 1,000 |
2.上記取引について、商品を受け取り、代金の残額は買掛金とした。なお、商品輸入時のレートは1ドル=110円であった。
(計算過程)
商品代金は30ドルですが、10ドルはすでに前払金として支払っているため、残りの買掛金の残額は20ドルであり、これは輸入時のレートを使用して求めます。仕入額は上記の前払金(円貨)と下記の買掛金(円貨)との合計で求められます。
買掛金20ドル:20ドル×110円=2,200円
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
仕入 | 3,200 | 前払金 | 1,000 |
- | - | 買掛金 | 2,200 |
(具体例2-外貨建取引・前受金)
欧州の得意先B社へ商品を50ユーロで販売するにあたり、前受金として10ユーロを現金で受け取った。なお、前受金受取時の為替レートは1ユーロ=150円であった。
(計算過程)
前払金10ユーロ:10×150円=1,500円
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
現金 | 1,500 | 前受金 | 1,500 |
2.上記取引について、商品を輸出し、代金の残額は売掛金とした。なお、商品輸出時のレートは1ユーロ=155円であった。
(計算過程)
商品代金は50ユーロですが、10ユーロはすでに前受金として受け取っているため、残りの売掛金の残額は40ユーロであり、これは輸出時のレートを使用して求めます。売上額は上記の前受金(円貨)と下記の売掛金(円貨)との合計で求められます。
売掛金40ユーロ:40ユーロ×155円=6,200円
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
前受金 | 1,500 | 売上 | 7,700 |
売掛金 | 6,200 | - | - |
外貨建取引は原則として取引発生時の為替レート(HR)で換算されます。上記の仕入・売上取引では前払金・前受金の授受や買掛金・売掛金などの掛債権債務もHRで換算されていますが、後日において買掛金・売掛金の決済時における為替レートと商品売買時のレートが異なれば、両者の為替レートの差額だけ、新たな損益が発生します。これは為替差損益(営業外収益・営業外費用)として商品売買とは別の損益として処理することになります。
実務指針第26項但書の取り扱いについて
売上高や仕入高などの取引額の換算については、上記の通り、前払金(前渡金)や前受金が充当される部分については、金銭授受時のレートによる換算額が付され、残りの部分については取引発生時のレートによる換算額が付されることになります。
(例:売上高=前受金(前受金発生時のレート)+売掛金(取引発生時のレート))
ただし、営業利益および経常利益に重要な影響をおよぼさないと認められるときは、当該取引高の全額を当該発生時の為替レートにより換算し、この金額を取引高に計上するとともに、前払金や前受金の金額授受時の為替相場との相違から生ずる換算差額は為替差損益として処理することも可能です(外貨建取引等の会計処理に関する実務指針26項但書参照)。
(具体例1-外貨建取引・実務指針26項但書の処理)
1.アメリカの仕入先A社より商品30ドル分を輸入するにあたり、前払金として10ドルを現金で支払った。なお、前払金支払時の為替レートは1ドル=100円であった。
(計算過程)
前払金10ドル:10×100円=1,000円
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
前払金 | 1,000 | 現金 | 1,000 |
2.上記取引について、商品を受け取り、代金の残額は買掛金とした。なお、商品輸入時のレートは1ドル=110円であった。ただし、当該レート差は営業利益および経常利益に重要な影響をおよぼさないと認められるため、当社では簡便的に取引高の全額を当該発生時の為替レートにより換算し、この金額を取引高に計上している。
(計算過程)
仕入取引額:30ドル×110円=3,300円
買掛金計上額:20ドル×110円=2,200円
為替差損益:3,300円-1,000円-2,200円=100円
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
仕入 | 3,300 | 前払金 | 1,000 |
- | - | 買掛金 | 2,200 |
- | - | 為替差損益 | 100 |
(関連項目)
外貨建取引(決算時の前払金・前渡金・前受金の換算)の仕訳
スポンサードリンク