デット・アサンプションの仕訳の基礎

デット・アサンプションとは、企業が金融機関に一定の金銭を支払う代わりに、自社の発行した社債の元利金の支払いを金融機関に引き受けてもらう契約をいいます(企業は社債を買入償還するのと同様の効果を得ることができます)。

デット・アサンプションは、社債の買入償還を行うための実務手続が煩雑であることから、企業にとって法的には債務が存在している状態のまま、社債の買入償還と同等の財務上の効果を得るための手法として広く利用されています。
しかし、社債の債務者は法的には企業のままですので、デット・アサンプションにより償還した社債の債務について企業か完全に解放されるわけではなく、あらためて債務の履行を求められることもあり得ます(金融商品会計に関する会計基準第42項(2)参照)。

現行の金融商品会計に関する会計基準において、金融負債の消滅を認識する条件は「金融負債の契約上の義務を履行したとき、義務が消滅したとき又は第一次債務者の地位から免責されたとき」に金融の消滅を認識しなければならないことになっており(金融商品会計に関する会計基準第10項参照)、企業が金融機関に金銭を支払って社債の償還を引き受けてもらうことは、債権者からの法的免責がなければ、企業(債務者)にとって債権者からの第一次的債務の免責とは認められず、金融負債の消滅に該当しません(金融商品会計に関する実務指針第46項前段参照)。

したがって、本来はデット・アサンプション契約において企業が金融機関に金銭の支払いを行っただけでは、会計上は買入償還と同様の処理(社債のオフバランス処理)はみとめられないのですが、上記のような手続上の実情を考慮し、取消不能の信託契約等により、社債の元利金の支払に充てることのみを目的として、当該元利金の金額が保全される資産を預け入れた場合等、社債の発行者に対し遡求請求が行われる可能性が極めて低い場合に限り、企業は当該自社発行社債の消滅を認識する(オフバランス処理する)ことが当分のあいだ経過処置として認められています(金融商品会計に関する会計基準第42項(2)、金融商品会計に関する実務指針第46項等参照)。

(具体例-デットアサンプション)

×1年1月1日に、当社が発行した社債(発行価額9,500円、額面金額10,000円、償還期限5年、償却原価法(定額法)により評価している)について、×3年12月31日に金融機関とデットアサンプション契約を締結し、金融機関に10,100円を支払を支払う代わりに、社債の元利金の支払いを金融機関に引き受けてもらうになった。
会社の金融商品会計基準42項(2)に規定する経過処置に基づいた×3年12月31日の金銭の支払いに関する仕訳を示しなさい。

(計算過程)
×3年12月31日時点における社債の帳簿価額:(10,000円-9,500円)×3年/5年=9,800円
社債償還損益:社債の帳簿価額9,800円-支払額10,100円=△300円

(仕訳)
借方 金額 貸方 金額
社債 9,800 現金 10,100
社債償還損 300

社債のオフバランス処理を行います。買入償還と同様に社債の帳簿価額と支払額との差額を損益(社債償還損益)として処理します。

(関連項目)
ローン・パーティシペーションの会計処理の基礎
社債を買入償還した時の仕訳・会計処理

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